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ネットワーク拡張設計とは?将来に備える構築の考え方

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成長を見越したネットワーク設計

【この記事のポイント】

ネットワークは「今の台数+数台分の余裕」で構成されることが多く、3年後に拠点や端末が増えたタイミングで一気に破綻します。

事業成長を前提とするなら、「アドレス空間の2~3割の余白」「階層構造による増設場所の決定」「冗長化とバックアップ経路」の3つが必須です。

段階的な拡張ではなく「最初から拡張前提の設計」を心がけることで、後々の大掛かりな再構築を避けられます。

今日のおさらい:要点3つ

  • アドレス設計では、サブネットを細かく切りすぎず、拠点やフロアごとに2~3割の拡張用スペースを残すことが重要です。
  • アクセス・ディストリビューション・コア層による階層構造で、「この段に1台足す」という定型パターンを作ると、増設が標準化されます。
  • SD-WAN・SASE・SSE中心型など、ビジネス側のクラウド化戦略と合わせてWAN構成を選ぶことで、柔軟な拡張が可能になります。

この記事の結論

ネットワーク拡張設計の本質は、アドレス・階層・WAN構成の3点を、3~5年先の拡張を前提にゆとりを持たせることです。

増設時に「この段に1台足す」という定石を決め、アドレス空間に予備を用意し、クラウド化とリモートワークの方向性を組み込んでおくことで、継ぎ足しの拡張から卒業できます。

短期的なコストで「今必要な分だけ」設計してしまうと、従業員数が1.5~2倍になった段階で、アドレス・VLAN・ポートが一気に不足し、多額の再構築コストが発生することになります。

「空いているポートに差してきた結果」が作り直しにつながったあるオフィス

机の下に「増設したスイッチ」が増えていく、あの肩の重い感覚

ネットワーク拡張設計の大切さを痛感したのは、「ポートが足りなくなるたびにスイッチを増やしてきたオフィス」の更改案件でした。その会社では、新入社員が入るたびに8ポートの小さなスイッチを増設。プリンタやIP電話も「空いているポート」にその都度接続。LANケーブルは色も長さもバラバラで、机の下にはスイッチの小さな島が点在。そんな状態が5~6年続いていました。

ある日、そのオフィスの配線ラックを見に行ったとき、私は思わず小さく息を飲みました。ラックの中には、メーカーも世代も違うスイッチが縦横無尽につながっていて、どのケーブルがどこへ行っているのか、パッと見ただけではとても分からない状態。普段はあまり言葉に出さない担当者が、ラックを見つめながらぽつりと、「…どこから手をつければいいんでしょうね。」と、ほとんど独り言のように言いました。その小さな溜息と一緒に、自分の肩まで重くなったような感覚を、今でもはっきり覚えています。

実は、「拡張を前提にしていなかった」ことが一番の原因だった

その後、現状調査と設計を進めていく中で、ネットワークベンダーのエンジニアがこう言いました。

「正直なところ、このネットワークは"場当たり的な拡張"の結果なんです。実は、最初に"拠点ごと・フロアごと・役割ごと"にサブネットとスイッチの役割を決めておけば、こんなに複雑にはなりませんでした。」

「よくあるのが、『新しい部署ができたので、とりあえずこのスイッチに足す』『この会議室にも1本引いておこう』という積み重ねです。ケースによりますが、従業員が倍近くになったタイミングで、一度"拡張前提の再設計"をやらないと、品質も管理も限界が来てしまいます。」

その言葉を聞いて、「今動いているから大丈夫」「あと2~3台は余裕があるから平気」という発想が、いかに将来の自分たちの首を絞めるかを痛感しました。ネットワークを「増やしても壊れないように作る」という視点が、完全に抜けていたのです。

将来を見越したネットワーク設計の基本

アドレス設計 ― 「今ちょうど」ではなく「2~3割の余白」を

ネットワーク拡張を見据えたアドレス設計の重要性が繰り返し強調されています。

ポイントは:

  • 拠点やフロア単位でサブネットを割り当てる。
  • 各サブネットは「今の端末数+3~5年で増える見込み+予備」をカバーできるサイズにする。
  • 組織全体のアドレス空間のうち、2~3割は新拠点や新システム用に空けておく。

クラウドベストプラクティスでも、「アドレス空間が重複しないこと」「サブネットでアドレス空間を使い切らず、将来の拡張に備えて一部を予約すること」が推奨されています。

例:

10.10.0.0/16を社内アドレスに採用。

10.10.1.0/24:本社1F(最大200台まで想定、今は50台)

10.10.2.0/24:本社2F

10.10.10.0/24~10.10.20.0/24:将来の拠点用に予約

正直なところ、「きれいに詰めたい」気持ちからギリギリまでアドレスを使い切ろうとしたくなります。しかし、ネットワーク設計は「空いているスペースを効率良く使う競技」ではなく、「将来の変化に耐えられる余裕を残す競技」だと考えた方が、長い目で見て得です。

階層構造 ― アクセス・ディストリビューション・コア

「LANは階層構造で設計する」ことが、拡張性と障害時の影響範囲の両面で重要だと説明されています。

典型的な3階層モデル:

アクセス層 各フロア・部門の端末やAPが直接つながるスイッチ。

ディストリビューション層 フロアごとのスイッチを集約し、VLAN間ルーティングやポリシー制御を行う。

コア層 拠点全体のトラフィックを束ね、データセンターやインターネット、他拠点との接続を担う。

メリット:

増設時は「アクセス層スイッチを1台足す」「新フロアをディストリビューション層にぶら下げる」という定型パターンで対応できる。

障害時に影響範囲を限定しやすい(1台のアクセススイッチの障害が、全社に波及しづらい)。

大規模ネットワーク構築の実例では、「スイッチ50台超の更改を階層単位で段階的に行ったことで、営業稼働への影響を最小限にできた」と紹介されています。

冗長化とバックアップ経路 ― 「どこが1本切れても持つか」を考える

「1本切れても耐えられる構成」を先に作っておくことも、将来の拡張に耐えるネットワークの条件です。

以下のような冗長化パターンが紹介されています。

  • コアスイッチの二重化(スタック構成やVRRPなど)。
  • インターネット回線の二重化(異なるキャリア・異なる経路)。
  • 拠点間VPNとモバイル回線(LTE/5G)によるバックアップ経路。

「NFVを活用してWANを刷新し、LTEをバックアップ回線として用意したことで、拠点増設時の手配や障害時の切り替えが大幅にスムーズになった」という事例が紹介されています。

実は、「拠点が増えれば増えるほど、1か所の障害が引き起こすインパクトは大きくなる」ため、冗長化は拡張設計の一部と考えた方が自然です。

拡張に強いWAN・クラウド接続の考え方

対策1 ― レガシーVPN、SD-WAN、SSE中心型の3つを比較する

企業WANの構成パターンは大きく次の3つに整理できます。

パターン 特徴 拡張性 メリット デメリット
レガシーVPN 専用線・IP-VPN中心。拠点はデータセンター経由でインターネットへ。 拠点追加ごとに回線・ルータ手配。 安定性・品質が高い。 新拠点追加に時間とコストがかかる。
SD-WAN型 インターネットVPN+制御装置。アプリごとに経路制御。 ソフトウェア設定で拠点追加がしやすい。 柔軟な経路制御・コスト最適化。 設計と運用に一定の専門性が必要。
SSE中心型 ゼロトラスト前提。端末からクラウドセキュリティ経由で直接インターネット。 拠点単位ではなくユーザ単位の拡張。 リモートワーク・クラウド利用と相性が良い。 レガシーなオンプレ環境の扱いに工夫が必要。

拡張設計の観点では、拠点を増やすたびに回線やCPE(ルータ)を個別手配するレガシーVPNはスピード面でハンデがある。SD-WANやSASE/SSE型は「設定一つで拠点やユーザを追加」できるため、拡張の柔軟性が高いという整理ができます。

対策2 ― クラウド時代のネットワーク設計を意識する

「クラウドサービスの利用が増えるほど、"社内ネットワークを太くして出口を1か所に集約する"構成は限界がある」と指摘されています。

従来: 拠点 → 本社(データセンター) → インターネット → SaaS。

これから: 拠点や端末 → 近くのインターネット回線 → クラウドセキュリティ(SSE) → SaaS。

拡張設計では、「オンプレ中心か、クラウド中心か」「リモートワーク比率はどれくらいか」といったビジネス側の要件も合わせて考える必要があります。

ある医療機関の案件では、「最初はオンプレ中心のレガシーVPN構成で拠点を増やしていたが、途中からクラウド診療システムが増え、レイテンシと運用負荷の問題でSD-WAN+クラウドセキュリティに切り替えた」という事例がありました。最初から「クラウドありき」で設計しておけば、移行コストはもっと小さくできたはずだと、担当者も振り返っていました。

対策3 ― 現場事例から学ぶ「増やしやすさ」の工夫

エンターテインメント施設でスイッチ50台超のネットワーク更改を行った経験から、次のような設計ポイントが挙げられています。

  • 機器の役割分担を明確にし、「どのスイッチを増やせばどのエリアが増やせるか」を一目で分かる構成にした。
  • 将来の店舗増床を見込んで、あらかじめ配管・配線ルートと空きポートを用意しておいた。
  • VLANとIPアドレスは、「今の店舗数+2店舗分」を最初から確保しておいた。

結果として、数年後の増床時には、新しいエリア用のスイッチを既存のディストリビューション層に追加。用意しておいたVLANとアドレス帯を割り当てるというシンプルな手順で拡張できたといいます。

正直なところ、「今はまだ店舗増床の予定はないですが…」という状況でも、「増えるかもしれない可能性」が1~2割でもあるなら、そのための「余白」を最初から設計に入れておいた方が、トータルで見て安心です。

対策4 ― 3~5年先のビジネス要件をネットワーク設計に組み込む

従業員数・拠点数・システム数の増加予測を立て、それに合わせてアドレス設計・階層構造・WAN構成を決定します。定期的な見直しを前提としながらも、初期設計段階で将来像を組み込むことが重要です。

対策5 ― 専門家によるレビューと段階的な実装を計画する

現状の構成と3~5年先の予想を紙に落とし込み、外部専門家によるレビューを受けます。その結果を踏まえて、段階的な拡張や更改計画を立てることで、急な大掛かり工事を避けられます。

よくある質問

Q1. ネットワーク拡張設計は、何年先を見て考えるべきですか?

A1. 一般的には3~5年先を目安に、従業員数・拠点数・システム数の増加を見込んで設計します。10年先を完全に読む必要まではありません。

Q2. アドレス空間をどれくらい「余らせる」のが適切ですか?

A2. ケースによりますが、組織全体で2~3割程度、各サブネットでも1~2割程度の余裕を残すと、拡張時の負荷が減ります。

Q3. SD-WANやSASEは、どの規模から検討すべきですか?

A3. 複数拠点間でクラウド利用が増えている企業や、リモートワークとオフィスを両立したい企業では、拠点数が数拠点の段階から検討する価値があります。

Q4. 小規模オフィスでも階層構造は必要ですか?

A4. 1フロア・数十台規模なら単純構成でも問題ありませんが、将来フロア追加や拠点拡大を予定しているなら、スイッチの役割だけでも階層を意識しておくと拡張しやすくなります。

Q5. 拡張設計で一番多い失敗は何ですか?

A5. 短期的なコストを優先して「ギリギリのアドレスとポート数」で構成してしまい、増設のたびに再設計や大掛かりな更改が必要になるパターンです。

Q6. クラウド中心の構成にすると、オンプレのネットワーク設計は軽視しても良いですか?

A6. いいえ。オンプレとクラウドは必ずどこかでつながるため、オンプレ側のアドレス設計やセグメント分割、インターネットブレイクアウトの方針は引き続き重要です。

Q7. ネットワーク拡張設計を外部に頼むと、費用対効果はありますか?

A7. 自社だけで手探りで拡張を繰り返し、数年後にフル更改するコストを考えると、初期段階で専門家の設計レビューや基本構想を入れておく方が、トータルで見て費用対効果が高いケースが多いです。

まとめ

ネットワーク拡張設計の要は、「アドレス空間に余白を残すこと」「階層構造で増やす場所を決めること」「WAN・クラウド接続を含めた全体構成を、3~5年先を見据えて選ぶこと」にあります。

「今なんとかなっているネットワーク」ほど、将来の拡張で一気に限界が露呈します。まずは現状の構成図と3年後のイメージを紙に落とし込み、「どこにどれくらい余裕があり、どこがボトルネックになりそうか」を一度言語化してみることが、次の一歩としておすすめです。


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