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Microsoft 365とGoogle Workspace、社内の使い分けで迷ったときの整理

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Microsoft 365とGoogle Workspaceのどちらを社内の標準にするかを、自社の業務から判断するための整理の仕方を解説します。

この二つに優劣はありません。あるのは「自社の業務に合うか、合わないか」だけです。

機能表を横に並べて勝敗を決めようとすると、まず答えが出ません。どちらも十分に成熟していて、一般的な事務作業でできないことはほとんどないからです。差が出るのは機能ではなく、いま社内にある資産と、社員の手が覚えている使い方の側にあります。

正直なところ、「どっちがいいですか」と聞かれて即答できる人はいません。にもかかわらず、担当者は社内から一人で答えを求められる。決めた瞬間に責任だけが自分に乗ってくる感覚は、兼任の情シスほど強く感じているはずです。


この記事のポイント

  • 比較すべきなのは製品同士ではなく、「自社の業務」と「それぞれの製品の前提」です。既存のOffice資産とマクロ、ファイル共有と権限の考え方、メール移行の手間、取引先とのやり取り、管理機能とログ、費用の階層。この六つを自社の実態に当てて並べると、答えは自然に片方へ寄っていきます。
  • 両方を同時に使う「混在」は、選ばなかったことによる先送りになりがちです。同じ資料が二か所に存在するファイルの二重管理と、社員アカウントが二系統に分かれる認証の分裂。この二つは、どちらも運用が始まってから効いてくるため、導入前に想定しておく必要があります。
  • 名古屋・愛知では、本社は事務中心、郊外に工場や倉庫、県内外に店舗や営業所という構成の会社が目立ちます。本社の都合だけで標準を決めると、現場のパソコンの古さや通信環境、共有端末の使い方と噛み合わず、後から例外だらけになるケースが少なくありません。

この記事の結論

一言で言うと、選定の基準は「どちらが高機能か」ではなく「いまの業務をどれだけ壊さずに移せるか」です。移行のコストは、ライセンスの費用より運用の混乱として現れます。

最も重要なのは、既存資産の棚卸しを先に済ませることです。マクロの入ったファイル、共有フォルダの権限、社外とやり取りしているファイル形式。これらを把握しないまま決めた選定は、ほぼ確実にやり直しになります。

失敗しないためには、全社一斉の切り替えを避けることです。部署単位で先に試し、そこで出た不満と手戻りを設計に反映してから広げる。この順番を守れた会社ほど、移行後の問い合わせが少なくて済みます。


「どっちがいいですか」と聞かれても、社内で答えが出ない

比較サイトの表を並べたまま止まってしまう

よくあるのが、機能比較の表をいくつも印刷して、そのまま数か月止まってしまうパターンです。

比較表には両方に丸が並びます。メールもある、カレンダーもある、チャットもビデオ会議もオンラインストレージもある。並べれば並べるほど差が消えていき、決め手が見つからない状態になります。

実は、その表には自社の情報が一行も入っていません。何人が何をしていて、どんなファイルが何年分たまっていて、取引先とどうやり取りしているのか。決定に必要なのは製品の情報ではなく、自社の情報のほうです。

現場から出てくるのは、機能名ではなく業務の言葉

現場は製品名で話しません。「あの見積書のファイルが開かなくなると困る」「毎月の集計に使っているシートが動くのか」「取引先から届く書式が崩れないか」。出てくるのはすべて業務の言葉です。

この言葉こそが、判断材料になります。集計シートの話はマクロや関数の互換性、書式の話はファイル形式と体裁、開かなくなると困るという話は共有フォルダの構造と権限の問題に翻訳できます。

まず必要なのは、現場の不安を製品の話に置き換えて書き出すことです。ここを飛ばして「新しいほうが便利です」と説明しても、現場は動きません。

決めた人が責任を負う、という警戒心

「上に説明できない」という相談を、この手のテーマではとくによく受けます。

理由ははっきりしています。どちらを選んでも不満は必ず出るからです。使い慣れた画面が変わり、保存場所が変わり、共有の手順が変わる。その全部が担当者の判断のせいにされる構図が見えているので、決めたくないという心理が働きます。

だからこそ、選定の理由を「好み」ではなく「基準」で残す必要があります。何を優先し、何を捨てたのか。この記録があるかないかで、導入後の説明のしやすさが変わります。


自社に合うかを見極める三つの基準

基準1:既存のOffice資産と、ファイル共有・権限の考え方

最初に確認したいのは、いま社内にあるファイルの中身です。とくに、マクロ(Excelなどで作業を自動化する簡易プログラム)が組み込まれたファイルが業務の中心にあるかどうかは、大きな分岐点になります。

ケースによりますが、長年使われてきた見積書や集計表には、担当者が自作したマクロや複雑な関数が入っていることが珍しくありません。作った本人がすでに退職している、というのもよく聞く話です。こうした資産が業務の根幹にあるなら、移行時に動作を確認する範囲は広くなります。逆に、資料の大半が単純な表と文書であれば、この論点の重みは下がります。

もうひとつが、ファイル共有と権限の考え方の違いです。片方は「フォルダに置き、フォルダに権限を付ける」発想と親和性が高く、もう片方は「ファイルそのものに共有相手を設定する」発想が中心にあります。どちらが正しいという話ではなく、いまの社内ルールがどちらに近いかという話です。

部署ごとにフォルダを切り、階層で権限を管理してきた会社が、ファイル単位の共有へ一気に移ると、現場は「誰が見られるのか分からない」と不安になります。ここは製品選び以上に、社内ルールの作り直しが必要になる部分です。

基準2:メール移行の手間と、取引先とのやり取り

メールは、移行作業の中で最も手間が読みにくい部分です。

過去のメールをどこまで移すのか、フォルダ分けを維持するのか、共有アドレスや自動転送、メーリングリストをどう再現するのか。実は、容量そのものより、こうした「運用で積み上がった設定」の移植に時間を取られます。何年分もの受信箱を全部持っていくのか、一定期間で区切るのかは、早い段階で方針を決めておきたい点です。

取引先とのやり取りも見落とせません。相手から届くファイルの形式、送り返すときの体裁、そして相手が使っているグループウェア。会議の招待や共有リンクの扱いは、相手の環境によって手数が変わります。

製造業の下請け・元請け関係が濃い地域では、取引先の指定する様式に合わせる場面が多くなります。自社の都合だけで決めると、結局は変換や手直しの作業が現場に残る。取引の多い数社について、実際のやり取りを洗い出しておくと判断が具体的になります。

基準3:管理機能とログ、そして費用の階層

管理者側から見ると、両者の違いは管理画面の作りと、取得できるログの種類に出ます。

見ておきたいのは、アカウントの作成と削除の手順、パスワードや多要素認証の強制、端末を紛失したときの対処、外部共有の制限、そして誰がいつ何を開いたかの記録です。とくにログは、情報漏えいを疑う出来事が起きたときに「何が起きたか」を説明できるかどうかを左右します。トラブルが起きてから使えないと分かるのが、この領域のいちばん困る点です。

費用については、どちらも複数の階層が用意されており、上位ほど管理やセキュリティの機能が増える構成になっています。ただしプラン名も金額も改定されるため、この記事では具体額を書きません。検討の際は、必ず最新の公式情報で確認してください。

判断のコツは、全員に上位階層を割り当てないことです。管理部門や機密を扱う部署は上位、現場の共有端末は下位、といった段階分けができるかどうかで、総額はかなり変わります。人数に単価を掛けた概算だけで比較すると、この差が見えません。


混在・地域事情と、どこまで自社でやるか

両方使うと必ず起きる、二重管理と認証の分裂

「部署ごとに使いやすいほうを」という結論は、一見すると柔軟です。ただ、混在には決まった副作用があります。

ひとつはファイルの二重管理です。同じ資料が二か所に存在し、どちらが最新か分からなくなる。片方で修正したものがもう片方に反映されず、古い版のまま社外へ出てしまう事故は、この状態でいちばん起きやすくなります。

もうひとつが認証の分裂です。社員一人に対してアカウントが二系統でき、入社と退職のたびに二重の手続きが必要になります。よくあるのが、退職者のアカウントが片方だけ残っているケース。棚卸しの対象が二つある状態は、担当者一人の運用では抜けが出ます。

混在を選ぶ場合は、「どちらを正とするか」を業務単位で決め、文書化しておくことが前提になります。決めずに併存させるのは、選ばないことの先送りです。

名古屋・愛知の本社と工場・店舗で起きるずれ

名古屋市内に本社を置き、郊外に工場や倉庫、県内外に店舗や営業所を持つ。愛知圏では見慣れた構成です。

この形で起きるのが、本社基準で決めた標準が現場と噛み合わないというずれです。本社は一人一台のパソコンで事務作業、工場は共有端末を複数人で使い、店舗はタブレットが中心。ログインのしやすさも、必要な機能も違います。築年数の経ったビルや工場では、無線環境や端末の更新周期が本社と同じとは限りません。

拠点ごとに「誰が、どの端末で、何をするか」を並べてから標準を決める。この一手間を入れるだけで、導入後の例外対応がかなり減ります。

移行時の抵抗と、自社でやること・外部に任せること

移行には必ず抵抗が出ます。これは製品の良し悪しではなく、手順が変わること自体への反応です。反発が出ない移行はないという前提で計画を立ててください。

進め方の原則は三つあります。第一に、一斉切り替えを避け、協力的な部署から小さく始めること。第二に、旧環境を一定期間は残し、戻れる状態を作っておくこと。第三に、変更点を「機能の説明」ではなく「あなたの毎日の作業がこう変わります」という形で伝えることです。全社説明会を一度開いて終わりにすると、問い合わせが担当者一人に集中します。

自社でやるべきなのは、実態の把握と社内調整です。使っているファイル、業務の流れ、拠点ごとの事情、取引先との慣習。これは外部の誰にも分かりません。外部に任せたいのは、移行の設計と実作業、アカウントや権限の初期構築、そして移行後の運用支援です。ネットワークや配線に手を入れる必要が出た場合、工事の範囲には有資格者による施工が必要なものが含まれます。「事実を集める」までが自社、「移して支える」からが外部、と線を引くと分かりやすくなります。


こういう会社は今すぐ社内の使い分けを整理すべき

  • 部署ごとに違うサービスを使っており、同じ資料が複数の場所に置かれている
  • 業務の中心にマクロや複雑な関数の入ったファイルがあり、作成者がすでに社内にいない
  • 退職者のアカウントが残っていないか、自信を持って答えられない
  • 共有フォルダの権限が長年つぎはぎで、誰がどこまで見られるか把握できていない
  • 取引先とのやり取りで、ファイル形式や体裁の手直しが日常的に発生している
  • ライセンスを全員に同じ階層で割り当てており、部署ごとの必要性を見直したことがない

ひとつでも当てはまるなら、まずは現状のアカウント数とファイルの置き場所を書き出すところから始めてください。整理は、乗り換えるかどうかを決める作業ではありません。乗り換える必要があるのかを判断するための材料を作る作業です。


よくある質問

Q1. 結局、どちらを選べばいいですか?

自社の業務によって答えが変わるため、一般論としての正解はありません。既存のOffice資産とマクロが業務の中心にあるか、社内の共有ルールがフォルダ単位かファイル単位か、取引先の環境はどうか。この三点を自社で確認すると、選択肢は絞られていきます。

Q2. 両方を併用しても問題ありませんか?

運用ルールを決めた上でなら成立します。ただし、ファイルの二重管理と認証の分裂という副作用は必ず考慮してください。業務ごとに「どちらを正とするか」を文書化し、アカウントの棚卸しを二系統分行う体制が取れるかが判断の分かれ目になります。

Q3. マクロ入りのファイルはそのまま使えますか?

内容次第です。単純な処理は問題なく動くこともあれば、外部の機能を呼び出しているものは動作確認が必要になります。ケースによりますが、重要なファイルを数本選んで先に試すのが現実的な進め方です。全部を一度に検証しようとすると止まります。

Q4. 費用はどちらが安いですか?

プランも価格も改定されるため、具体額は最新の公式情報で確認してください。比較のコツは、人数×単価の総額だけを見ないことです。全員を同じ階層にするか、部署ごとに階層を分けるかで総額は変わります。

Q5. メールの過去分はすべて移せますか?

技術的に移せる範囲は広いものの、手間と時間はかかります。何年分を移すか、フォルダ構成を維持するか、共有アドレスや転送設定をどう再現するかを先に決めてください。この方針が決まらないまま作業に入ると、移行期間が読めなくなります。

Q6. 社員から反発が出たときはどうすればよいですか?

反発は出る前提で計画してください。有効なのは、協力的な部署から小さく始め、その部署の担当者に現場での相談役になってもらう進め方です。機能の説明ではなく、日々の作業がどう変わるかを具体的に示すほど、抵抗は小さくなります。

Q7. 選定にはどれくらいの期間を見ておくべきですか?

規模と資産の量によって幅がありますが、既存ファイルの棚卸しと試験導入の期間を必ず織り込んでください。検討から全社展開までを数週間で終える計画は、たいてい途中で止まります。試験導入で出た問題を設計へ反映する時間を確保するのが要点です。


まとめ

Microsoft 365とGoogle Workspaceの比較は、優劣を決める作業ではありません。自社の業務にどちらの前提が近いかを確かめる作業です。

判断材料は六つ。既存のOffice資産とマクロ、ファイル共有と権限の考え方、メール移行の手間、取引先とのやり取り、管理機能とログ、費用の階層。この六つを自社の実態で埋めれば、決め手のない状態からは抜け出せます。

混在という選択肢も残りますが、ファイルの二重管理と認証の分裂という代償を引き受ける覚悟がいります。決めずに併存させるのは、いちばん運用が重くなる形です。

そして、移行の成否を分けるのは製品ではなく進め方です。小さく始め、戻れる状態を保ち、変更点を業務の言葉で伝える。名古屋・愛知のように本社と工場、店舗を抱える構成なら、拠点ごとの使い方を並べてから標準を決めてください。まず、社内のどのファイルから棚卸しを始めますか?



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