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「まだ動いているから大丈夫」が危ない|ネットワーク機器のEOLと更新計画

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ネットワーク機器の保守期限を洗い出し、五年サイクルの更新計画と予算を社内で通すまでの手順を解説します。

「動いているかどうか」は、ネットワーク機器を使い続けてよい理由になりません。判断すべきなのは、その機器がメーカーからまだ守られているかどうかです。

ルーターやスイッチ、無線アクセスポイント、UTMには、販売終了と保守終了の期限があります。EOL(イーオーエル)は販売や出荷の終了、EOS(イーオーエス)はサポートの終了。実は、危険なのは後者を過ぎた瞬間からです。

正直なところ、自社の機器がいつ買われ、いつサポートが切れるのかを即答できる中小企業はほとんどありません。買ったのは前任者、設定したのは工事業者、書類は倉庫のどこか。そのまま何年も経ち、ある日いきなり止まる。この記事は、そうなる前に手を打つための順番をまとめたものです。


この記事のポイント

  • EOLとEOSは別物です。販売が終わってもサポート期間が数年残っていることは珍しくなく、逆にまだ現役で売られている型番でも、自社の個体は保守契約が切れている場合があります。危険度を決めるのは購入時期ではなく、メーカーのサポート終了日と自社の保守契約の期限です。
  • 更新の理由は「壊れそうだから」ではありません。修正プログラムが出なくなること、故障時に代替機が手に入らないこと、設定を新しい機器へ移せないこと、保守を断られること。この四つはどれも、壊れる前から確定している不利益です。壊れてから動くと、選択肢が値段と納期の両方で悪くなります。
  • 名古屋・愛知では、築年数のあるオフィスビルの一室に十年以上前の機器がそのまま置かれ、本社と郊外の工場・倉庫、複数店舗を同じ設計でつないでいる会社が目立ちます。拠点が増えるたびに機器を足してきた結果、どの拠点に何がいつから入っているのか、社内の誰も把握していないという状態になりがちです。

この記事の結論

一言で言うと、ネットワーク機器の寿命は故障ではなくサポート終了で決まります。物理的に動くかどうかと、安全に使い続けられるかどうかは、まったく別の話です。

最も重要なのは、機器の一覧に「保守期限」の列を作ることです。台帳がなければ計画は立てられず、計画がなければ予算も取れません。逆に言えば、この一覧さえあれば話は一気に前へ進みます。

失敗しないためには、全部まとめて替えようとしないことです。優先順位はインターネットの出入口から。次に社内の基幹スイッチ、最後に末端。この順で五年程度のサイクルに分散させれば、単年度の負担も、稟議の説明も現実的な大きさに収まります。


壊れていない機器を替える理由が、うまく言葉にできない

まず「今、使えているか」で判断してしまう

よくあるのが、機器の状態を「ランプが正常に点いているか」「通信できているか」だけで確認しているケースです。

この見方には決定的な弱点があります。サポートが終了した機器も、その日は普通に動くからです。脆弱性が公表されて修正版が出ない状態でも、代替機がもう市場にない状態でも、表面上は何も変わりません。異常が見えないことと安全であることは別なのに、日々の確認では区別がつかないのです。

体感として不具合が出ていないため、優先順位はどんどん下がります。そして、下がったまま数年が過ぎる。ここが最も多い失敗の入り口です。

現場から出てくるのは「まだ動いてるのに、なぜ替えるの」

更新の話を出すと、必ず返ってくる言葉があります。「困っていないよね」「去年も同じこと言ってなかった?」「予算があるなら別のことに使いたい」。

責める話ではありません。現場から見れば当然の反応です。壊れていないものを買い替える提案は、感覚的には無駄遣いに見えます。ましてやネットワーク機器は、社員の目に触れる場所にありません。パソコンやコピー機なら古さが見えますが、天井裏やラックの中の箱は、誰の記憶にも残らないのです。

つまり担当者は、見えないものの価値を、見えている支出と比べて説明しなければなりません。これが難しい。難しいから後回しになる。この構造を先に理解しておくと、進め方が変わります。

「上に説明できない」という、いちばん重いモヤモヤ

ひとり情シスや総務兼任の担当者からは、「必要なのは分かっているが、稟議の書き方が分からない」という相談をよく受けます。

セキュリティが不安です、古いので心配です。この書き方では通りません。何が起きるのか、起きたらいくら損をするのか、いつまでに手を打つ必要があるのか。決裁者が知りたいのはその三点だからです。技術の正しさではなく、経営判断の材料が求められている。

ここで止まってしまう担当者は本当に多いのですが、実は、必要な材料は台帳を作る過程でほとんど揃います。順番の問題です。


EOL機器を放置してはいけない三つの基準

基準1:修正プログラムが出なくなり、穴が開いたままになる

サポートが終わるということは、新しい脆弱性が見つかっても修正版が提供されないということです。

ここが一番怖い点です。脆弱性の情報は公表されます。つまり、攻撃する側にも「この型番のこのバージョンには、この穴がある」と知られる。一方で、利用側は塞ぐ手段を持たない。時間が経つほど不利になる一方の状態が、サポート終了後の機器です。

とくにインターネットとの出入口にあるルーターやUTM、VPN機器は、外から直接見える位置にあります。社内のパソコンをいくら守っても、出入口が古いままでは意味が薄れる。優先順位を出入口からにする理由は、まさにここにあります。

なお、脆弱性の深刻度や影響範囲は製品や構成によって大きく異なります。自社の機器が該当するかどうかは、メーカーの公表情報や保守業者に確認するのが確実です。

基準2:壊れてから探しても、代替機も設定の移し先もない

販売が終了した機器は、故障しても同じものを買えません。中古市場に出ていたとしても、素性の分からない機器を基幹に入れるのは避けたい選択です。

そして、もうひとつ見落とされがちな問題があります。設定の引き継ぎです。世代が離れた機器へは設定ファイルをそのまま移せないことが多く、設計を読み解いて作り直す必要が出てきます。ケースによりますが、この作業には調査と検証の時間がかかります。止まってから始めれば、その間ずっと業務が止まったままです。

さらに厄介なのが、設定の意図が誰にも分からなくなっているケース。当時の担当者も業者も変わり、なぜこの通信だけ許可されているのか、この経路は何のためなのかが不明。落ち着いて調べれば解けることでも、障害の最中では手が付けられません。

止まってから動くと、機器の納期、設定の作り直し、業務停止の損失が同時に降ってきます。計画的に替えるのとは、負担の質がまったく違うのです。

基準3:保守を断られ、契約の対象外になる

意外と知られていないのが、保守契約の側の期限です。

メーカーの保守サービスは、製品のサポート終了に合わせて受付を終了します。延長できる期間が用意されていることもありますが、それも無期限ではありません。保守業者に見てもらおうとしても、部品がない、メーカーに問い合わせできない、という理由で対応の範囲が限られる場合があります。

見落としやすいのは、保守が切れた機器が一台あるだけで、そこに関係する障害全体の切り分けが難しくなる点です。原因の可能性がある機器を交換して確かめる、という基本手順が使えなくなるからです。

契約書と機器の型番、この二つを突き合わせる作業を一度もしていないなら、そこから始める価値があります。


棚卸しの手順と、名古屋の現場で起きていること

台帳に保守期限を書き、五年サイクルで予算化する

手順は四段階です。第一に、拠点ごとに設置されている機器をすべて書き出す。ルーター、スイッチ、無線アクセスポイント、UTM、電話まわりの装置、無停電電源装置まで含めます。第二に、それぞれの型番、設置年、保守契約の有無と期限、メーカーのサポート終了日を調べて列に埋める。第三に、期限の近い順に並べ替える。第四に、年度ごとに割り振る。

台帳はエクセル一枚で十分です。大切なのは項目を揃えることで、見栄えではありません。設置年が分からない機器は「不明」と書いておく。空欄にせず不明と書いておけば、それ自体が調査項目として残ります。

割り振りの考え方は、機器を三つの層に分けることです。まずインターネットの出入口。ここは外部からの攻撃に直接さらされ、止まれば全社が止まります。次に社内の基幹スイッチ。ここが落ちれば拠点全体が通信できません。最後に末端のスイッチや無線アクセスポイント。影響範囲がフロアや部屋に限られる分、緊急度は下がります。

そのうえで、五年程度のサイクルを目安に置きます。機器の寿命や保守期間は製品によって幅がありますが、五年という区切りを置くと、毎年おおよそ全体の五分の一を更新する形になり、単年度の金額が平準化されます。突発的な大型支出ではなく、毎年の維持費として扱えるようになる。これが予算を通しやすくする最大の工夫です。

予算の説明も、この台帳から組み立てます。「古いので替えたい」ではなく、「この機器は◯年◯月にサポートが終了し、以降は脆弱性の修正が提供されません。故障時の代替機も入手できず、復旧には設定の作り直しを含めて相応の日数がかかります。止まると影響するのは全拠点です」。事実、影響範囲、期限。この三つを並べるだけで、稟議書の中身は変わります。加えて、今年替えないなら来年はどうするのかまで書いておくと、判断を先送りにされにくくなります。

名古屋・愛知に多い、築年数のあるビルと工場・多拠点の組み合わせ

名古屋市内の中規模オフィスビルに本社を置き、郊外に工場や倉庫、県内に営業所や店舗を持つ。愛知圏では見慣れた構成です。

この形には特有の事情があります。まず、築年数のあるビルでは、機器が電話交換機と同じ小部屋や天井裏に押し込まれていることが多く、そもそも現物を確認しづらい。次に、拠点が増えるたびに別の業者が別の時期に別の機器を入れてきた結果、拠点ごとに世代も型番もばらばらになっている。そして工場や倉庫では、生産設備や在庫システムに直結しているために「止められない」という理由で更新が延び続けます。

止められないからこそ、計画が要ります。稼働を止められない拠点ほど、事前に代替機を用意して短時間で切り替える段取りが必要で、それには準備期間と予算の確保が前提になるからです。行き当たりばったりで替えられないという事実は、更新を先延ばしする理由ではなく、早く計画に載せる理由になります。

どこまで自社でやり、どこから外部に頼むか

自社でやるべきなのは、事実を集めるところまでです。拠点ごとの機器の書き出し、設置年、契約書の確認、止められない時間帯や業務の把握、次年度以降の拠点計画。これらは社外の誰も知りません。

外部に任せたいのは、調査と設計、そして工事です。型番からサポート終了日を調べる作業、現行設定の読み解き、新しい機器への移行設計、切り替えの段取り、そして配線や設備に関わる工事。とくに電気工事や電気通信工事には有資格者による施工が必要な範囲があり、社内の担当者が手を出すべきではありません。

線引きの目安はこうです。「何がどこにあるか」までが自社、「それをどう替えるか」からが外部。この整理ができていると、業者に相談したときの見積もりも早く、精度が上がります。逆に台帳を持たずに相談すると、まず現地調査からになり、時間も費用も余計にかかります。


こういう会社は今すぐ機器の棚卸しをすべき

  • ネットワーク機器の設置年や型番を一覧にしたものが社内に存在しない、または最後に更新したのがいつか分からない
  • 導入を担当した社員がすでに退職している、あるいは当時の工事業者との付き合いが途切れている
  • インターネットの出入口にあるルーターやUTM、VPN機器を五年以上入れ替えていない
  • 拠点が増えるたびに機器を追加してきたが、拠点ごとの構成を一枚にまとめた資料がない
  • 保守契約の対象になっている機器と、なっていない機器の区別がついていない
  • 来期に移転、増員、新拠点の開設が控えており、既存の機器をそのまま持っていくつもりでいる

ひとつでも当てはまるなら、まずは現物を見て回るところから始めてください。棚卸しは、機器を替えると決める作業ではありません。替えるべきかどうかを判断する材料を、社内に残す作業です。


よくある質問

Q1. EOLとEOSは何が違うのですか?

EOLは販売・出荷の終了、EOSはサポート・保守の終了です。危険度が上がるのはEOS以降で、脆弱性の修正や技術サポート、部品供給が止まります。呼び方や区切り方はメーカーによって異なるため、自社の機器については製品ごとの公表情報で確認してください。

Q2. サポートが切れても、動いているなら使い続けてよいのでは?

おすすめできません。動作と安全は別の話だからです。修正されない脆弱性は公表され続け、時間が経つほど攻撃されやすい状態になります。とくにインターネットに直接面した機器は、社内の対策をいくら積み上げても守り切れない位置にあります。

Q3. 買い替えの周期はどれくらいが目安ですか?

ケースによりますが、五年程度を一つの区切りに置く会社が多く見られます。ただし製品ごとにサポート期間は異なり、設置環境や稼働条件でも差が出ます。年数で機械的に決めるのではなく、メーカーのサポート終了日を基準に、年数は予算計画の目安として使うのが現実的です。

Q4. 全部を一度に替える予算がありません。

一度に替える必要はありません。むしろ分散させるべきです。インターネットの出入口、基幹スイッチ、末端の順に優先順位をつけ、年度ごとに割り振ってください。単年度の金額が下がるだけでなく、切り替え作業の影響範囲も小さくなります。

Q5. 古い機器の型番や設置年が分かりません。

現物の本体や背面に貼られたラベルに型番と製造番号が記載されていることが多く、そこから調べられます。設置年は、契約書や請求書の日付、社内の稟議記録からたどるのが確実です。どうしても分からない場合は「不明」と記録し、調査項目として残してください。

Q6. 更新すると業務が止まりますか?

作業内容によりますが、切り替えの時間は必要です。事前に代替機を準備し、設定を移しておく段取りを組めば、停止時間を短くできる場合があります。工場や店舗のように止められない現場ほど、事前準備の時間を確保できる計画的な更新が向いています。

Q7. 稟議を通すには、何を書けばよいですか?

事実、影響範囲、期限の三点です。サポート終了日という動かせない事実、止まったときに影響する拠点や業務の範囲、そしていつまでに手を打つ必要があるか。技術的な詳細より、この三点を先に書くほうが判断されやすくなります。


まとめ

ネットワーク機器の更新は、壊れる前提の話ではありません。メーカーが守ってくれる期間が終わるという、あらかじめ決まっている期限の話です。

その期限を管理する道具が、保守期限の列を持つ機器台帳です。エクセル一枚で構いません。書き出して、期限順に並べ、年度に割り振る。この三つが終わった時点で、更新計画は半分できたようなものです。

優先順位は、インターネットの出入口から。次に基幹スイッチ、最後に末端。五年程度のサイクルに分散させれば、単年度の負担も稟議の説明も現実的な大きさに収まります。「古いから」ではなく「いつ、何が、どこまで影響するか」で語れるようになれば、決裁の景色は変わります。

名古屋・愛知のように、本社と工場、複数拠点を抱える構成なら、台帳の単位は拠点ごとです。誰も全体を把握していない状態を、まず終わらせる。自社の機器のうち、サポート終了日をすぐ答えられるものは何台ありますか?



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