
ネットワーク運用を内製か外注かで迷ったときに
【この記事のポイント】
「全部内製が良い」「全部外注が良い」という単純な答えはありません。
従業員100名規模で情シス2名の内製は年間1,400~1,900万円、一方IT運用アウトソーシングは年間420~520万円程度であり、年間900~1,400万円のコスト差が発生します。
「監視・障害対応は外注」「設計・ベンダーコントロールは内製」というハイブリッド構成が、多くの企業にとって現実的で持続可能な選択肢になります。
今日のおさらい:要点3つ
- 「うちには◯◯さんがいるから大丈夫」は「◯◯さんがいなくなったら終わり」と表裏一体の属人化リスクです。
- 定常業務は外注し、企画・投資判断・ベンダーコントロールは内製で握るハイブリッド型が多くの企業に向いています。
- 数字だけでなく、リスク・業務負荷・業務理解の必要性を含めて総合的に比較することが重要です。
この記事の結論
ネットワーク運用は「外注か内製か」の二択ではなく、会社の規模・IT人材・ネットワークの重要度に応じた組み合わせが必要です。
監視・障害対応などの定常業務は外注で安定性を確保し、業務理解が必要な企画・投資判断・ベンダーコントロールは内製で握ることで、運用負荷を減らしながら戦略的判断ができます。
まずは現状のネットワーク運用業務を書き出し、「自社で握るべきところ」と「外の力を借りた方が良いところ」を整理することが、次の一手につながります。
深夜のオフィスで「このネットワーク、誰が守るの?」とつぶやいた日
終電間際、障害対応のログをまとめながら
ネットワーク運用を内製だけで抱えるのは危ないと実感したのは、ある障害対応の夜でした。20時を過ぎたあたりから一部拠点で通信が不安定になり、監視アラートのメールがひっきりなしに届き、拠点の担当者から「また切れました」とチャットが飛んでくる。ベンダーに問い合わせながらログをかき集めて原因を絞り込んでいく。気づけば、オフィスには私と上司の2人だけ。
終電まであと30分という時間になってようやく一段落し、ログを整理しているとき、ふと上司がつぶやきました。「実は、うちのネットワークって、僕ら2人が倒れたら誰も見られないよね。」その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がじわっと冷える感覚がありました。
「全部自前でやれている」という誇りと、「ずっと続けられるのか」という不安
翌週、同じ上司とランチをしながら、この話題になりました。上司は「よくあるのが、"今、何とかなっているから"って理由で、全部内製で続けちゃうパターンなんだよね。正直なところ、僕らの年齢や体制を考えると、どこかで外の力を入れないといけない気はしている。」と言いました。
私も「実は、僕もこの前、夜中に"ネットワーク 運用 外注 内製 コスト"って検索しまくっていました。でも、外注に出したら仕事を取られるんじゃないかっていう、変な警戒心もあって。」と返しました。
上司は「わかる。でも、"丸投げ"か"全部自前"かじゃないはずなんだ。監視や一次対応を外注して、設計やベンダーコントロールは僕らが握る形もあるしね。」と話してくれました。
あの日、帰り道の電車の中で「ネットワーク運用 アウトソーシング」「情シス 1人 体制 限界」といったワードを何度も検索しました。そのときの検索履歴は、今振り返ると「内製と外注の間で揺れていた自分の心」そのものだった気がします。
内製と外注、それぞれのメリット・デメリット
内製(自社運用)のメリット・デメリット
IT内製の特徴は以下のように整理されています。
| 内製のメリット | 内製のデメリット | |
|---|---|---|
| 業務理解 | 業務フローや社内文化を深く理解した上で判断できる。 | 他社事例やベストプラクティスに触れる機会が少なくなりがち。 |
| スピード | 現場のすぐそばにいて、オンサイト対応が早い。 | 人数が少ないと、同時多発のトラブルに対応しきれない。 |
| コスト構造 | 一見すると「外注費がかからない」ように見える。 | 給与・教育・採用・退職リスクまで含めると、総コストは高くなりがち。 |
| 属人化リスク | キーマンがいると意思決定が早い。 | 情シス1人・2人にノウハウが集中し、退職・病気でリスクが顕在化。 |
| 柔軟性 | 社内事情に合わせた「グレーな運用」もしやすい。 | 標準化・ドキュメント化が後回しになりやすい。 |
多くの中小企業では情報システム担当が1人しかいない、あるいは兼任であることが指摘されており、DXやセキュリティ対応が追い付いていない現状が示されています。
正直なところ、「うちには◯◯さんがいるから大丈夫」という状態は、裏を返せば「◯◯さんがいなくなったら終わり」ということでもあります。
外注(アウトソーシング)のメリット・デメリット
IT運用やネットワーク運用の外注については、以下のような特徴が整理されています。
| 外注のメリット | 外注のデメリット | |
|---|---|---|
| 体制 | チームで24時間365日対応するなど、体制が安定しやすい。 | 契約範囲外の作業は追加費用になることが多い。 |
| コスト | 中小企業では、内製2名よりも年間コストが数百万円~1,000万円以上安くなる事例もある。 | 長期的には、外注費の累積で内製より高くなるケースもある。 |
| ノウハウ | 多数の顧客・環境での運用実績とベストプラクティスを持っている。 | 自社特有の事情や文化への理解には時間がかかる。 |
| リスク | 担当者の退職リスクがなく、サービスレベルで品質が担保される。 | ベンダーロックインやスイッチングコストが発生する可能性。 |
「ネットワーク機器の監視~障害切り分け~性能監視~予兆監視を24時間365日代行し、IT管理者の運用負荷を大幅に削減する」といったアウトソーシングサービスのメリットが挙げられています。
ただし、「初期コストは低く抑えられても、契約内容次第では追加費用や変更コストが積み重なり、長期的には内製より高くなる可能性もある」と注意喚起されています。
ハイブリッド(内製+外注)の考え方
最近の解説では、「内製か外注か」ではなく、「ハイブリッド型」が推奨されるケースが増えています。
外注するもの:
- 監視・バックアップ管理・死活監視・ファーム更新などの定常運用
内製で握るもの:
- ネットワーク設計・ベンダー選定・予算策定・社内調整
スポット契約:
- 一部のプロジェクトや高度なセキュリティ対応は、専門コンサルと期間限定契約
「止まると数百万円単位の損失が出るコアシステムは外注による安定運用が望ましく、社内限定ツールなどは内製でも十分対応可能」といった「重要度ベースの切り分け」が提案されています。
実は、関わっている企業でも、日々の監視と一次障害対応を外注チーム(24/365)に、障害の最終判断と再発防止策を社内情シスに、ネットワーク更改やゼロトラスト導入の企画を社内+外部コンサルの共同で行うという形に変えてから、情シスの残業時間が月30時間近く減り、代わりに「業務部門とのディスカッション」や「次年度の投資計画」に時間を使えるようになりました。
どちらが向いている?判断のチェックポイント
対策1 ― 会社の規模とIT人材の状況を把握する
「情シス1人、あるいは兼任1人」という体制が非常に多いことが示されています。
従業員50名未満:
内製:兼任での最低限の運用+外部へのスポット委託。
外注:ネットワーク監視やヘルプデスクをパックでアウトソーシングする選択肢も。
従業員50~200名:
内製:情シス専任1~2名+業務理解を持ったキーパーソン。
外注:監視・保守・一部システム運用をアウトソーシングして、内製は企画と調整に集中。
従業員200名以上:
内製:ネットワーク・サーバ・アプリケーションなど役割分担されたチーム。
外注:データセンター運用やグローバル拠点など、規模の大きい領域をマネージドサービスに委託。
正直なところ、「従業員100名で情シス2名」がフル内製で全領域をカバーするのは、かなりタイトです。この規模では外注の方が年間900~1,400万円ほどコスト効率が良いとされています。
対策2 ― ネットワークの重要度と損失を評価する
「止まったときの損失と重要度」で外注/内製を分ける視点が提案されています。
「ネットワークが30分止まるだけで数百万円の売上機会を失う」ECサイトやコールセンターは、高度な監視・SLA付きの外注が向いています。
「社内のファイルサーバやプリンタが一時的に使えない程度」で済むバックヤード系ネットワークは、内製+スポット支援でも十分なケースが多いです。
SaaS利用の拡大や働き方の多様化で、ネットワークの安定性が「売上そのもの」に直結する企業が増えており、その場合の運用アウトソーシングの有効性が語られています。
対策3 ― 長期コストとスイッチングコストを比較する
コスト面では、「目先の月額だけで判断しない」ことが大切です。
内製の場合:
- 人件費、採用費、教育費、退職リスクによるロス。
- 「ITに詳しい人が他の仕事と兼任」の状態による機会損失。
外注の場合:
- 毎月の委託費。
- 契約範囲外の作業や追加要件のたびの見積・請求。
- ベンダー変更時のスイッチングコスト(データ移行・手続き・学習コスト)。
「スイッチングコストが高い市場では、長期的に価格が高止まりしやすい」と指摘されており、IT運用でも同じ構造が起こり得ます。
「最初はフル外注→徐々に内製化」「一部内製→監視だけ外注」というように、段階的にバランスを調整していくのが現実的です。
対策4 ― 業務の棚卸しと重要度評価を実施する
現在のネットワーク運用業務(監視・障害対応・構成管理・更新計画・ヘルプデスクなど)をリストアップし、各業務が止まったときの影響度を「高・中・低」で評価します。
対策5 ― ハイブリッド案の設計と段階的な実装を計画する
「定常業務は外注」「戦略的判断は内製」という役割分担を設計し、どの領域から外注化するかをプライオリティ付けします。一度にすべてを外注化するのではなく、段階的に進めることが現実的です。
よくある質問
Q1. コストだけ見ると、外注と内製はどちらが安いですか?
A1. 従業員100~200名規模では、内製2名よりも外注の方が年間900~1,400万円ほど安いという試算もありますが、契約内容や期間によって変わります。数字だけでなく、リスクや業務負荷も含めて比較すべきです。
Q2. 全部外注にしても大丈夫ですか?
A2. ネットワーク運用そのものは可能ですが、社内の業務理解や投資判断・ベンダーコントロールを担う「IT責任者」は内製で必要です。完全丸投げは、結局うまくいきません。
Q3. 小規模企業でも外注は検討すべきですか?
A3. はい。情シス不在・兼任が多い小規模企業ほど、最低限の監視や障害対応をパックで外注するメリットがあります。月数万円からのサービスも増えています。
Q4. 外注しても、属人化リスクはなくなりますか?
A4. 担当者レベルの属人化は減りますが、ベンダーへの依存度が高まり、スイッチングコストという別のリスクが生まれます。契約やドキュメントの透明性を確保することが大切です。
Q5. ハイブリッド型を採用する場合、どこまでを外注すべきですか?
A5. 一般的には、監視・障害一次対応・ルーティン作業を外注し、ネットワーク設計やベンダー選定・社内調整を内製で握る形が、多くの企業で採用されています。
Q6. 外注先を選ぶときのポイントは何ですか?
A6. 実績(業種・規模)、対応時間(24/365か)、SLA、セキュリティ体制、コミュニケーションの相性、契約範囲の明確さ、スモールスタートの可否などを比較することが重要です。
Q7. 内製を続ける場合、最大の注意点は何ですか?
A7. 情シス担当者の孤立と属人化です。業務の棚卸し・ドキュメント化・引継ぎ可能な体制づくりを進めないと、担当者の離職や病気が「システムリスク」になります。
まとめ
ネットワーク運用は、「外注か内製か」の二択ではなく、会社の規模・IT人材・ネットワークの重要度・許容できるリスクに応じて、外注・内製・ハイブリッドを組み合わせて設計するのが現実的です。
「今は何とかなっているから」という理由だけで内製を続けるのも、「コストが安そうだから」と丸投げで外注するのも、どちらも危うい選択です。まずは現状のネットワーク運用業務を書き出し、「自社で握るべきところ」と「外の力を借りた方が良いところ」を一度整理してみるだけでも、次の一手が見えてきます。
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