
「なんとなく遅いWi-Fi」を卒業するために|場所・時間・端末で原因をたどる進め方
【この記事のポイント】
- 無線LANの速度低下は「回線」「ルーター/AP」「電波環境」「同時接続」「端末」のどこで起きるのかを切り分けられるようになる
- 自分の環境で最初にチェックすべき“5つのポイント”が、チェックリストとしてイメージできる
- 実体験や現場の声から、「再起動でごまかしていた頃」と「原因を言葉にできるようになった後」の違いが感覚的に分かる
今日のおさらい:要点3つ
- 一言で言うと、無線LANが遅い原因の多くは「アクセスポイントの位置と性能」「電波の混雑」「同時接続と通信量の偏り」にあります
- 最も重要なのは、「有線だとどうか?」「全体か/一部か」「いつもか/特定時間か」をまず確認し、“どこを疑うべきか”を絞り込むことです
- 失敗しないためには、ルーターの買い替えや回線変更に飛びつく前に、「設置位置・周波数帯・チャンネル・同時接続台数・バックグラウンド通信」を見直すのが近道です
この記事の結論
一言で言うと「無線LANの“遅い”は、感覚ではなく“場所・時間・端末”で切り分けてから、AP・電波・トラフィックの順に手を打つと、ムダなく改善できる」です。
最も重要なのは、「①有線での速度」「②APの位置と数」「③周波数帯とチャンネル」「④同時接続台数と通信量」「⑤端末側の状態」の5項目を順番に確認していくことです。
失敗しないためには、“とにかく良さそうなルーター1台に総入れ替え”ではなく、「今どの部分が詰まっているか」を見える形にしてから、必要なところだけを変える発想が必要です。
まず「どこで・いつ・どのくらい遅いか」を切り分ける
ステップ① 有線ではどうか?で大まかに分ける
最初にやってほしいのは、「同じ場所で有線接続すると速いかどうか」の確認です。
有線では十分速い/安定している → インターネット回線やプロバイダではなく、無線LAN側(AP・電波・端末)の問題である可能性が高い。
有線も遅い/不安定 → 光回線やONU、ルーター、さらに先のネットワーク全体を疑う必要がある。
正直なところ、ここを確認せずに「回線が悪い」「Wi-Fiルーターが悪い」と議論しても、いつまでも堂々巡りになります。
ステップ② 「全部遅いのか/特定だけ遅いのか」を見る
次に、「全員が遅いのか」「特定の場所・端末・時間帯だけ遅いのか」を切り分けます。
全フロア・全員がいつも遅い → 回線やルーター、上位のネットワークが疑わしい。
特定の部屋だけ遅い → 電波の届き方や障害物、APの位置・数の問題。
特定の時間帯だけ遅い(朝・昼・夕方) → トラフィック集中やバックグラウンド通信(アップデート・バックアップなど)の可能性。
特定の端末だけ遅い → 端末側の無線LANアダプタやドライバ、設定の問題。
この「誰が/どこで/いつ」が分かるだけで、闇雲に設定画面をいじるより、原因に早く近づけます。
【実体験1】“みんな遅い”と言われていたが、遅かったのは会議室だけだった
以前、とあるオフィスから「社内のWi-Fiが全体的に遅い」という相談を受けたことがあります。
ヒアリングで詳しく聞くと、
- 実は、“遅い”と声が上がっていたのは主に会議参加者。
- 固定席で作業している人たちからは、特にクレームが出ていない。
という状態でした。
実際に速度を測ってみると:
- 執務エリア:無線でも下り100Mbps前後で安定。
- 会議室:人数が増えると10Mbpsを切り、Web会議でカクカク。
つまり、「みんな遅い気がする」と感じていた担当者の頭の中と、実際に遅い場所にはズレがあったわけです。
“どこが・いつ・どれくらい遅いか”を切り分けるだけで、対策の範囲が一気に絞り込めると痛感しました。
無線LANが遅くなる代表的な原因とチェックポイント
原因① アクセスポイント(AP)の性能・台数不足
無線LANのボトルネックとしてよくあるのが、「家庭用ルーター1台に、業務利用の端末を詰め込みすぎている」ケースです。
よくある状況:
- 社員数10〜20人程度。
- 1人あたりPC+スマホの2台接続。
- 会議室のTV会議端末やタブレットも同じAPにつながっている。
これだけでも同時接続台数は30〜40台。 家庭向けルーターだと“推奨20台程度”のケースも多く、限界を超えると
- 接続はするが速度が出ない。
- 一部の端末が頻繁に切断される。
といった症状が出ます。
チェックポイント:
- AP/ルーターのスペック(同時接続台数の目安)。
- 実際に何台つながっているか(管理画面で確認)。
- 会議中やピーク時に接続台数が増えすぎていないか。
【実体験2】「社員10人だから大丈夫」と思っていたら、実際は40台つながっていた
小規模オフィスで無線環境を見直したとき、担当者はこう話していました。
「社員10人なので、家庭用ルーターでも足りると思っていました。」
ヒアリングして一覧にしてみると:
- ノートPC:10台
- スマホ:10台
- タブレット:5台
- プリンタ:2台
- TV会議端末・ストリーミング用PC:数台
合計で、常時30〜40台が接続されている計算でした。 その数字を見た瞬間、担当者は
「実は、そんなに台数があるって意識したことがなかったです。」
と、少し驚いたように笑っていました。
最終的に、
- APを業務用に変更。
- 執務エリアと会議室でAPを分ける。
という構成にしただけで、Web会議中の“カクカク”はほぼ解消。 「人の数」ではなく「端末の数」を見て設計する重要性を、改めて感じた現場でした。
原因② 電波の届き方・周波数帯・チャンネルの問題
速度低下のもう一つの定番は、電波が届きにくい/混雑していることです。
ありがちなパターン:
- APが部屋の隅や床に置かれている。
- 金属棚・壁・コピー機・電子レンジなど、電波を遮ったり乱すものが近くにある。
- 2.4GHz帯に周辺のSSIDが密集していて、互いに干渉している。
チェックポイント:
- APと端末の距離(壁や床を挟んでいないか)。
- APの設置高さ(できれば腰より上、可能なら天井付近)。
- 2.4GHz/5GHzのどちらを使っているか。
- チャンネルの重なり(周辺のネットワーク一覧を眺めてみる)。
よくあるのが、“とりあえずここに置きやすいから”という理由で、電波的には最悪の位置にAPが置かれているケースです。
原因③ 同時接続数とトラフィック集中(バックグラウンド通信)
「日中はまだマシなのに、朝一や夕方だけ極端に遅い」という場合、トラフィックの集中と帯域不足が疑われます。
例:
- 月曜の朝、Windows Updateやアプリのアップデートが一斉に走る。
- 昼休みに動画視聴や大容量ダウンロードが集中。
- 夜間バックアップと社員の残業時間が重なってしまう。
このとき、APや回線のスペック自体は足りていても、「その時間だけ使い方が偏っている」ことで速度低下が起きます。
チェックポイント:
- 速度が落ちる時間帯に、何が動いているか(更新・バックアップなど)。
- Web会議や大容量ダウンロードが、特定の時間に集中していないか。
- APやルーターのCPU・トラフィック負荷が、時間帯によって跳ね上がっていないか。
改善のために「今日からできる」見直しポイント
ポイント① APの位置と台数を見直す
まず効果が出やすいのが、アクセスポイントの位置と台数の見直しです。
- APを部屋の中央寄り・高い位置に移動する。
- 会議室や人が密集するエリアには、専用のAPを用意する。
- 障害物の影になっている場合は、数メートル動かして電波状況を確認する。
少し手間はかかりますが、「スマホの電波測定アプリ」で歩き回りながら、強い/弱い場所を色分けしていくと、自分のオフィスの“電波地図”が見えてきます。
正直なところ、“置きやすい場所”と“電波にとって良い場所”はほぼ一致しません。設置位置を変えるだけで体感が変わることがよくあります。
ポイント② 2.4GHz/5GHzの使い分けとチャンネル設定
次に見直したいのが、周波数帯とチャンネル設定です。
2.4GHz帯
- 壁越しでも届きやすいが、電子レンジや周辺APとの干渉が起きやすい。
5GHz帯
- 距離や障害物に弱いが、干渉が少なく、安定しやすい。
おすすめの進め方:
- 重要な業務(Web会議・オンライン面接など)は、なるべく5GHzへ。
- 2.4GHzは“どうしても5GHzが届かない場所”の補助として使う。
- 周辺SSIDを見て、極端に混んでいるチャンネルを避ける。
「SSIDが1つだと簡単だから」と2.4GHzしか使っていないオフィスも多いですが、5GHzをうまく併用するだけで“なんとなく重い”が減ることがよくあります。
ポイント③ バックグラウンド通信と使い方を整える
最後に、人間の使い方側を少し整えると、無線LANの“遅い時間帯”を減らせます。
具体例:
- OSやアプリの大規模アップデートは、なるべく夜間や人の少ない時間にずらす。
- 夜間バックアップがあれば、Wi-Fiではなく有線側に流すよう経路を調整する。
- 大容量のファイル共有は、ピーク時間帯を避けるようガイドする。
もちろん、「社員の行動を細かく制限する」のは現実的ではありません。 ただ、“毎週月曜の朝にアップデート祭り”が起きているような場合は、
「実は、この時間帯だけ無線LANが詰まっているので、更新タイミングを少しずらしませんか。」
と提案するだけで、かなり現場のストレスが変わります。
よくある質問
Q1:無線LANが遅いとき、どの順番で確認すれば良いですか?
A1:①有線での速度、②全体か一部か(場所・端末・時間帯)、③APの位置と台数、④周波数帯とチャンネル、⑤同時接続台数とバックグラウンド通信、の順で見るとムダが少なくなります。
Q2:ルーターを買い替えれば速くなりますか?
A2:古い機種や性能不足なら改善することもありますが、設置位置や同時接続台数、周波数帯の使い方に問題がある場合は、機種を変えても劇的には変わりません。原因を切り分けてから判断するのがおすすめです。
Q3:2.4GHzと5GHz、どちらをメインで使うべきですか?
A3:障害物が少ないオフィス内であれば、重要な業務は5GHzをメインにした方が安定しやすいです。2.4GHzはどうしても5GHzが届かない場所の補助として使うイメージが現実的です。
Q4:アクセスポイントは何台くらい必要ですか?
A4:床面積・壁の材質・端末数によって変わりますが、「AP1台あたり20台前後」「会議室など人が密集する場所には専用AP」を目安に検討すると、極端な混雑を避けやすくなります。
Q5:パソコン側の設定で速度が変わることはありますか?
A5:はい。古い無線LANドライバや、省電力設定でWi-Fiの出力が制限されている場合など、端末側がボトルネックになっていることもあります。特定の端末だけ遅い場合は、OS・ドライバの更新や設定も確認してみてください。
Q6:メッシュWi-Fiにすれば解決しますか?
A6:設置が簡単で電波の死角を減らしやすい反面、製品や構成によってはバックホール部分が混雑し、期待したほど速度が出ないこともあります。オフィス用途では、業務用AP+有線バックボーンの方が安定するケースも多いです。
Q7:どのタイミングで専門業者に相談した方がいいですか?
A7:自分たちで「有線/無線」「場所/時間」「端末」を切り分けても原因がはっきりしない場合や、APの増設・業務用Wi-Fiへの移行を検討している場合は、一度プロの電波調査や設計レビューを受けると、遠回りを避けられます。
まとめ
無線LANが遅いと感じたら、まずは「有線ではどうか」「遅いのは全体か/一部か(場所・時間・端末)」を切り分けることで、“Wi-Fi側の問題なのか、回線やネットワーク全体の問題なのか”を見極めることが重要です。
そのうえで、「アクセスポイントの位置と台数」「2.4GHz/5GHzの使い分けとチャンネル」「同時接続台数とバックグラウンド通信」「端末側の状態」を順番に見直していけば、“なんとなく遅いWi-Fi”を“業務に支障のないレベルまで安定した無線LAN”に近づけていくことができます。
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