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退職者のアカウントが残っていませんか|権限の棚卸しと入退社の手順

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退職者や異動者のアカウントを確実に止めるために、入退社の手順と権限の棚卸しをどう整えるかを解説します。

退職した社員のアカウントが、いまも生きている。中小企業ではまったく珍しい話ではありません。

パソコンは返ってきた、席も片付いた、貸与のスマートフォンも回収した。それでもクラウドサービスのIDだけは、止める担当が決まっていないまま静かに残り続けます。

正直なところ、「自社にいくつのアカウントがあるか」を即答できる会社はほとんどありません。退職者の分どころか、在籍者の分すら一覧になっていない。その状態から抜け出すための手順を、この記事にまとめます。


この記事のポイント

  • 残ったアカウントのリスクは三つに整理できます。第三者や元社員による不正アクセス、退職前後の情報持ち出し、そして誰も使っていないライセンスへの支払い。前の二つは事故が起きるまで見えず、最後のひとつは毎月静かに費用として積み上がっていきます。
  • 対策の中心は、ツールの導入ではなく手順の固定化です。入社・異動・退職のそれぞれで「誰が・何を・いつまでに」やるかをチェックリストにし、人事の情報と情シスの作業をつなぐ。この一枚があるかないかで、止め忘れの発生率はまったく変わります。
  • 名古屋・愛知では、本社と工場・倉庫・複数店舗を抱える会社が多く、拠点ごとに採用と退職が動きます。現場で人が入れ替わったことを本社の担当が数週間後に知る、という時間差が起きやすく、その間ずっとアカウントが生きたままになる構造的な弱点を抱えがちです。

この記事の結論

一言で言うと、アカウントの止め忘れは「担当者の注意不足」ではなく「手順の不在」から生まれます。人が気をつけて防ぐものではありません。手順に落とし、抜けたら気づける形にする以外に方法はありません。

最も重要なのは、人事の情報を起点にすることです。退職日や異動日を最初に知るのは人事や総務であって、情シスではありません。ここから情シスへ情報が流れる経路が決まっていない限り、どれだけ丁寧な作業手順を作っても動き出しません。

失敗しないためには、いきなり完璧を目指さないことです。まずは全アカウントの一覧を粗くてもいいので作る。次に退職時のチェックリストを一枚作る。そのうえで定期棚卸しの頻度を決める。この順番を守ると、途中で止まりにくくなります。


退職者のアカウントが残っていると気づいたとき、何から手をつけるか分からない

「たぶん止まっているはず」で終わってしまう

よくあるのが、退職者が出たときにメールアカウントだけを止めて、それで完了にしてしまうパターンです。

会社のメールが使えなくなれば、たしかに一番目立つ入口はふさがります。しかし実際には、クラウドストレージ、勤怠システム、会計や販売管理のクラウド、チャットツール、名刺管理、経費精算、そして共用のファイルサーバー。ひとりの社員には、思っている以上の数のIDがぶら下がっています。

さらに厄介なのが、部署が独自に契約したサービスです。営業部だけが使っている顧客管理ツール、現場だけが使っている工程管理アプリ。情シスが把握していない契約は、当然ながら止める対象のリストにも載りません。担当者が「たぶん止まっているはず」と考えている裏側で、実は生きているIDが残っています。

現場から出てくるのは「まだ使えたほうが便利」という声

止める作業を進めようとすると、現場から反対の声が上がることがあります。

「引き継ぎが終わっていないから、しばらく残しておいてほしい」「あの人のフォルダにしか資料がない」「共有のIDを止められると全員が困る」。どれも業務上は切実な言い分で、頭ごなしに却下すると協力を得られなくなります。

実は、この声が出てくること自体が別の問題を教えてくれています。個人のアカウントに業務データが溜まっている、共有IDに依存している、引き継ぎの締め切りが決まっていない。アカウント管理の話は、必ず業務の作り方の話につながっていきます。

事故が起きるまで誰も困らない、という怖さ

ひとり情シスや総務兼任の担当者からは、「危ないのは分かっているが、上に説明できない」という相談をよく受けます。

残ったアカウントは、何も起きていないうちは誰にも迷惑をかけません。だから優先順位が上がらない。予算も工数も、目の前で止まっているシステムの復旧に回されます。そして何かが起きたときに初めて、「なぜ止めていなかったのか」と問われる。この非対称さが、担当者のモヤモヤの正体です。

説明の材料になるのは、使っていないライセンスの費用と、退職者数に対する未停止アカウントの数です。感覚ではなく数で示すと、話が通りやすくなります。


権限の棚卸しを進める三つの基準

基準1:止める順番を「外からの入口の広さ」で決める

すべてを同時に止められないなら、順番を決めます。判断軸は、社外から直接入れるかどうかです。

最優先は、インターネット越しに社外から利用できるものです。VPN、リモートデスクトップ、シングルサインオンの土台となるアカウント、クラウドメール、クラウドストレージ。これらは会社の建物に入らなくても使えるため、残っていること自体がそのまま外部からの入口になります。

次が、社内ネットワークに接続してから使う業務システムや共有フォルダ。最後に、単体で契約している小さなサービスや、閲覧しかできないツール。この三段階で並べると、限られた時間でも危険な順に手を打てます。

ここで押さえておきたいのが、シングルサインオンの土台を止めれば全部止まる、とは限らない点です。個別にIDとパスワードを設定できるサービスは、土台を止めても直接ログインできてしまう場合があります。ケースによりますが、「まとめて止まったはず」と考えず、主要なサービスは個別に停止を確認するほうが安全です。

基準2:個人のIDと共有IDを分け、共有IDは廃止に向かう

アカウントは二種類に分けて扱います。個人に紐づくIDと、複数人で使い回している共有IDです。

個人のIDは、退職日をもって止めるだけで済みます。問題は共有IDのほうです。部署共通の受注メール、複数人が使う管理画面のログイン、現場で共有しているパスワード。共有IDは退職者が出ても止めようがなく、パスワードを変えるしかありません。そして変更すれば残った全員に周知が要るため、面倒さから放置されがちです。

共有IDには、もうひとつ致命的な弱点があります。誰が操作したのか分からないこと。何かトラブルが起きても記録から人を特定できず、原因の追及も再発防止も進みません。

方針としては、共有IDは段階的に廃止し、個人IDに権限を割り当てる形へ寄せていくのが基本です。すぐに全廃できない場合でも、まずは「新しく共有IDを作らない」「退職者が出たら該当の共有IDは必ずパスワードを変更する」の二つを決めておくだけで、状況の悪化は止まります。

基準3:人事の情報を起点にし、棚卸しの頻度を決める

止め忘れの多くは、退職や異動の情報が情シスに届かないことで起きます。だから作業手順より先に、情報の流れを決めます。

現実的なのは、入社・異動・退職のいずれかが決まった時点で人事や総務から情シスへ連絡する経路を一本化することです。連絡の様式は簡素で構いません。氏名、所属、発生日、対象となる貸与物。この程度が定型で届けば、情シス側は当日までに作業の準備ができます。異動が抜けやすい点にも注意が要ります。異動は退職と違って本人が社内に残るため、前の部署の権限を外す作業が忘れられやすいからです。

そのうえで、定期棚卸しの頻度を決めます。目安としては、全アカウントの突き合わせを年に一回から二回、退職者が出た月は該当分の停止確認をその月のうちに、というのが中小企業では回しやすい形です。監査や取引先の要請がある場合は、求められる頻度に合わせて調整してください。

棚卸しの中身は難しくありません。人事が持つ在籍者名簿と、各サービスのアカウント一覧を突き合わせ、名簿にない名前を洗い出す。それだけです。ただし一覧が存在しなければ突き合わせようがないため、最初の一回だけは、使っているサービスを全部書き出す作業から始めることになります。


貸与端末の回収と、名古屋の現場事情

端末・証明書・入退室カードという物理の回収

アカウントの停止と同じ重さで扱いたいのが、物理的に渡してあるものの回収です。

対象になるのは、ノートパソコン、スマートフォン、タブレット、社内Wi-Fi用の設定が入った端末、VPN接続に使う証明書やトークン、入退室用のICカード、そして紙の資料や外付けの記録媒体。とくにVPN証明書は、端末を返してもらえば済むと考えられがちですが、証明書そのものを無効化しないと、複製された状態では接続できてしまう可能性があります。端末の回収と、サーバー側での無効化。この二つはセットです。

私物の端末で会社のメールやチャットを使っていた場合は、さらに注意が要ります。返却してもらう物がないぶん、設定の削除やリモートでのデータ消去を、退職日までに本人立ち会いで済ませておく必要があります。

名古屋・愛知に多い、多拠点と現場採用の時間差

名古屋市内に本社を置き、郊外に工場や倉庫、県内外に営業所や店舗を持つ。愛知圏ではよくある構成です。

この形で起きやすいのが、人の出入りと情報伝達の時間差です。現場で採用や退職があっても、本社の総務にその情報が届くのは締め日や月次のタイミング。情シスが知るのはさらにその後。結果として、退職から数週間、アカウントが生きたままという状態が生まれます。

対策としては、拠点ごとに窓口となる担当者を一人決め、人の異動があったらその日のうちに定型の連絡を入れる運用にすること。同時に、拠点で勝手にクラウドサービスを契約しない、契約するときは必ず本社に届け出るというルールも合わせて決めておくと、把握できていない契約の増殖を抑えられます。

どこまで自社でやり、どこから外部に頼むか

自社でやるべきなのは、一覧と手順を持つことです。使っているサービスの棚卸し、在籍者名簿との突き合わせ、入社・異動・退職のチェックリスト、人事と情シスの連絡経路。これらは社内の実態を知る人にしか作れません。外部に丸投げしても、精度の高いものにはなりません。

外部に頼むと効率がよいのは、仕組みで支える部分です。アカウント管理の一元化、ログの取得と保存、リモートでの端末管理、VPNや認証基盤の設計と設定変更、そしてネットワーク機器や配線に関わる作業。配線や電気設備に関わる工事は有資格者による施工が必要な範囲があるため、自社作業は避けてください。

線引きの目安はこうです。「誰がいて、何を使っているかを決める」までが自社。「それを自動で反映し、記録に残す」からが外部。この境目を意識しておくと、相談したときの見積もりも具体的になります。


こういう会社は今すぐ権限の棚卸しをすべき

  • 直近一年で退職者や異動者が出たのに、その人のアカウントを止めた記録がどこにも残っていない
  • 全社で使っているクラウドサービスの一覧がなく、部署ごとに契約しているものを情シスが把握できていない
  • 部署共通のIDやパスワードを複数人で使い回しており、誰が操作したかを後から特定できない
  • VPNやリモート接続を導入しているが、証明書やアカウントを無効化する手順が決まっていない
  • 支払っているライセンス数と、実際に使っている人数を突き合わせたことが一度もない
  • 人事や総務から情シスへ、退職・異動の情報が届く経路が個人的なやり取りに頼っている

ひとつでも当てはまるなら、まずは使っているサービスを紙一枚に書き出すところから始めてください。棚卸しは、犯人を探す作業ではありません。何が残っているかを知り、次から残さない形を作るための作業です。


よくある質問

Q1. 退職者のアカウントは、退職日当日に止めるべきですか?

原則として退職日当日、遅くとも翌営業日には停止してください。ただし引き継ぎの都合で猶予が必要な場合は、期限を決めたうえで権限を閲覧のみに落とす、上長の管理下に移すといった形にします。「しばらく様子を見る」という曖昧な状態が、いちばん残りやすい形です。

Q2. アカウントは削除すべきですか、それとも無効化ですか?

まずは無効化が現実的です。削除するとメールやファイルまで消え、後から必要になったときに取り戻せない場合があります。一般的には、退職時にすぐ無効化してログインを止め、一定期間を置いてからデータの引き継ぎ状況を確認して削除、という二段構えが安全です。

Q3. 共有アカウントをすぐには廃止できません。どうすればいいですか?

段階的で構いません。当面は「新規に作らない」「退職者が出たら必ずパスワードを変更する」「変更履歴を記録する」の三点を決めてください。そのうえで、業務上どうしても必要な共有IDだけを残し、それ以外は個人IDへ移していくと、負担を抑えながら減らせます。

Q4. 棚卸しはどれくらいの頻度でやるべきですか?

ケースによりますが、全体の突き合わせは年に一回から二回、人の出入りがあった月は該当分の確認をその月内に、というのが中小企業では回しやすい形です。取引先や業界のルールで頻度が指定されている場合は、そちらに合わせてください。

Q5. 誰が責任者になるべきですか?

情シスだけに任せると必ず抜けます。人事や総務が「人の情報を出す責任」を、情シスが「止める責任」を持ち、経営側が両方の実施状況を確認する。この三者の役割を文書で決めておくと、担当者が代わっても運用が続きます。

Q6. 貸与パソコンは返却されました。それだけで安全ですか?

十分とは言えません。端末が手元に戻っても、VPN証明書やクラウドサービスのIDが生きていれば、別の端末から接続できてしまう可能性があります。物理的な回収とサーバー側での無効化は、必ずセットで実施してください。

Q7. どこから手をつけるのが最短ですか?

使っているサービスの一覧作成からです。ここが埋まらないと、止めるべき対象も費用の無駄も見えません。請求書や引き落としの明細を一年分見返すと、把握していなかった契約が見つかることがよくあります。まず一覧、次にチェックリスト、最後に頻度の順です。


まとめ

残ったアカウントは、静かなリスクです。何も起きていない間は誰も困らず、起きたときには原因の特定すら難しくなっています。だからこそ、日々の注意ではなく手順で防ぐしかありません。

整えるものははっきりしています。使っているサービスの一覧、入社・異動・退職のチェックリスト、共有IDの廃止方針、貸与端末とVPN証明書の回収手順、そして定期棚卸しの頻度。どれも特別なツールを必要としません。

そして要になるのが、人事と情シスの連携です。退職や異動を最初に知るのは人事側であり、止める作業をするのは情シス側。この二つが個人的なやり取りでつながっている限り、担当者が休んだ日や忙しかった月に、必ず抜けが生まれます。

名古屋・愛知のように拠点が分かれ、現場ごとに人が入れ替わる会社なら、時間差の対策も欠かせません。拠点の窓口を決め、その日のうちに情報が動く形にする。まずは自社で使っているクラウドサービスを、何個書き出せますか?



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