
ビジネスフォンをいつ入れ替えるべきか、故障する前に社内で判断するための具体的な基準を解説します。
ビジネスフォンの入れ替えは、壊れてから考えるものではありません。判断の起点は故障ではなく、メーカーの保守が終わる時期です。
主装置(電話機をまとめて制御している箱のこと。多くはサーバールームや事務所の隅に設置されています)の交換部品が尽きた瞬間、修理という選択肢は消えます。そこから慌てて動くと、機種の選択肢も工事日程も条件が悪くなる。
正直なところ、総務やひとり情シスの担当者から「今の電話がいつ入ったものなのか、社内の誰も分からない」という相談が本当に多いです。導入した担当者はすでに退職し、書類も残っていない。その状態のまま何年も動いている会社は珍しくありません。
この記事のポイント
- ビジネスフォンの寿命は「電話機が鳴るかどうか」では測れません。判断すべきは主装置の保守期間と部品供給の残りで、ここが切れると軽微な不具合でも全台入れ替えしか手が残らなくなります。まだ使えているうちに確認しておくことが、費用と時間の両方を守ります。
- 入れ替えの判断軸は四つに整理できます。保守サポートの残り期間、内線数の余裕と増設の可否、この先三年の移転や増員の予定、そしてクラウド化を検討するかどうか。この四つを紙一枚に書き出すだけで、社内の議論はかなり進みます。
- 名古屋・愛知圏では、築年数の経ったオフィスビルや、事務所と工場・倉庫が離れた多拠点の運用がよく見られます。建物側の配線が古い、拠点間を内線でつないでいる、といった条件は入れ替えの手間に直結するため、機器だけを見て判断すると想定外の工事費が出ます。
この記事の結論
一言で言うと、ビジネスフォンの入れ替え時期は「保守が終わる日から逆算する」ものです。故障は結果であって、合図ではありません。合図はもっと前に、静かに出ています。
最も重要なのは、主装置の型番と設置年、そしてメーカー保守の状況を今すぐ確認することです。この三つが分かれば、来年動くべきか、三年後でいいのかが判断できます。逆に、これが分からないまま見積もりを取っても比較のしようがありません。
失敗しないためには、機器の更新だけを単独で考えないことです。移転、増員、拠点の統廃合、在宅勤務の有無。これらの予定と重ねて計画すると、同じ工事を二度やる無駄が消えます。ケースによりますが、更新と移転を一本化できれば工事の手間はまとめられます。
電話が古いのは分かっている、けれど何を基準に動けばいいのか分からない
「まだ鳴っているから」で毎年見送られる
担当者の多くは、電話が古いことを認識しています。それでも予算の話になると、後回しになる。理由は単純で、壊れていないからです。
パソコンやネットワーク機器と違い、ビジネスフォンは動作が目に見えて重くなることがありません。十年前の機種でも、受話器を取れば普通に話せてしまう。だから「今年は見送り」が毎年繰り返されます。
実は、この「普通に使えている」状態こそ危険です。保守部品の供給は、使用状況とは無関係に、メーカーの都合で終わります。使えているかどうかと、直せるかどうかは別の話。ここが混ざったまま判断されている会社が非常に多いのです。
現場から出てくるのは不満ではなく「回避行動」
よくあるのが、現場が不便を訴えないまま、自分たちで工夫して回避しているケースです。
「あの電話機だけ調子が悪いから、あそこは使わないようにしている」「保留が切れることがあるから、大事な用件は携帯にかけ直している」「増設できないので、新しく入った人は隣の席の電話を共用している」。こうした声は、担当者の耳には届きません。現場としては困りごとを解決済みだと思っているからです。
そのため、担当者が「特に問題は出ていない」と認識したまま、実態はかなり無理をしている、というズレが生まれます。年に一度でいいので、電話の使い方を現場に直接聞く場を作ると、この隠れた回避行動が見えてきます。
「今動くと高くつくのでは」という警戒心
もう一つ、担当者を止めているのが費用への警戒心です。まだ使えるものを替えると言えば、上から「なぜ今なのか」と必ず聞かれます。そこで説明できる材料がない。これが一番のモヤモヤです。
ここで効くのが、感覚ではなく事実の提示です。保守がいつまでなのか、部品供給が終わっているのか、今の内線数はあと何台まで増やせるのか。この種の事実は調べれば分かります。
「壊れたら困るから」では稟議は通りません。「保守がこの時期に終わり、その後は修理不能になる。電話が止まれば受注と問い合わせが受けられない」。この形にすると、判断は経営側の話になります。担当者が一人で抱える問題ではなくなる、という点も大きい。
ビジネスフォンの入れ替え時期を決める三つの判断基準
基準1:保守サポートと部品供給の残り期間
最優先で確認するのは、保守の残り期間です。一般に、ビジネスフォンの主装置はメーカーの販売終了後、一定期間だけ修理対応や部品供給が続き、その後は打ち切られます。期間はメーカーや機種によって異なるため、必ず型番で確認してください。
税務上の話をすると、デジタル構内交換設備やデジタルボタン電話設備の法定耐用年数は六年とされています。ただしこれは減価償却の区分であって、六年で壊れるという意味ではありません。実務では十年前後使われている機器も普通にあります。詳細な取り扱いは顧問税理士や国税庁の情報で確認してください。
確認すべきは次の三点です。主装置の型番と製造年。メーカーの保守受付が継続しているか。保守契約を結んでいる場合、その契約範囲に部品交換が含まれているか。ここが「部品があれば対応」という条件になっていると、部品が尽きた時点で契約があっても直りません。ケースによりますが、この落とし穴は保守契約書を読み直すと見つかります。
型番は、主装置本体に貼られたラベルで確認できます。事務所の天井近くや配電盤の横、書庫の裏などに設置されていることが多く、そもそも場所が分からないという相談もよく聞きます。見つけたらラベルを写真に撮り、設置年とあわせて社内で共有しておいてください。これだけで、次の担当者に引き継げる情報になります。
基準2:内線数の余裕と増設できる余地
次に見るのは、内線の空きです。主装置には収容できる電話機の台数に上限があり、上限を超える場合は増設ユニットの追加か、上位機種への入れ替えが必要になります。
問題は、その増設ユニットが手に入るかどうかです。本体の保守が終わっている機種は、当然ながら増設用の部品も入手困難になっています。「一台増やすだけ」のはずが、主装置ごと入れ替えという結論になるのは、これが理由です。
判断の目安として、現在の内線数が上限の八割を超えていて、かつ人員を増やす計画があるなら、入れ替えの検討時期に入っていると考えて差し支えありません。ここで一度余裕を持たせておくと、その後の数年は増設のたびに悩まずに済みます。逆に、当面人数が変わらず保守も残っているなら、急いで動く理由はありません。
基準3:この先三年の移転・増員・クラウド化の予定
三つ目は、機器ではなく会社側の予定です。オフィス移転、拠点の追加や統合、人員の増減、在宅勤務やモバイル利用の拡大。これらの予定があるかどうかで、選ぶべき方向が変わります。
近いうちに移転するなら、今の場所で入れ替えるのは無駄になりかねません。移転に合わせれば、配線工事と機器更新をまとめて計画できます。逆に移転の予定がなく、拠点も増えないなら、従来型のビジネスフォンをそのまま更新するのが素直な選択です。
クラウド型(主装置を自社に置かず、事業者のサービスとして電話機能を使う方式)を検討するかどうかも、この段階で決めておきます。スマートフォンを内線として使いたい、拠点をまたいで内線を統一したいという要望があるなら、比較対象に入れる価値があります。ただし、通信環境の品質に左右される方式でもあるため、社内のネットワークやインターネット回線の状況とセットで判断してください。どちらが優れているという話ではなく、拠点構成と働き方によって適した方式が変わるだけです。
回線の変化と、自社でやること・業者に任せること
ISDN終了とIP網への移行が主装置に与える影響
固定電話網はIP網への移行が進んでおり、従来のISDN(INSネット)のうちデータ通信に使われていたディジタル通信モードは、補完サービスへの切り替えという形で扱いが変わりました。この補完サービスにも提供期限が示されています。期日や条件は変更されることがあるため、最新の情報はNTT東日本・西日本など通信事業者の公式案内で必ず確認してください。
なぜこれがビジネスフォンの話に関わるかというと、古い主装置はISDN回線を前提に設計されているものがあるためです。回線側がひかり電話などに変わると、変換装置を挟んで使い続けるか、主装置そのものを対応機種に替えるかの判断が発生します。
実は、ここで「回線は変わったが電話機はそのまま」という状態のまま何年も運用している会社が少なくありません。動いてはいるものの、構成が複雑になり、不具合が起きたときの切り分けが難しくなります。回線契約の内容と主装置の対応状況は、一度あわせて棚卸ししておくべきです。
名古屋・愛知圏でよくある建物と拠点の事情
名古屋の中心部には築年数を重ねたオフィスビルが多く、館内の配線設備が当時のまま残っているケースがあります。フロア内の配管に空きがない、既存のケーブルが古い規格のまま、といった条件は、機器の入れ替え費用そのものより工事の段取りに影響します。
また、事務所は市内、工場や倉庫は郊外という構成の会社も多く見られます。拠点間を内線でつないでいる場合、片方の主装置だけを新しくすると、内線の仕組みを組み直す必要が出ることがあります。片側だけ替えて話が通じなくなった、という相談は実際にあります。
建物によっては、共用部の工事に管理会社の申請や作業時間の制限が伴います。土日や夜間しか作業できないこともある。機器の納期だけでなく、この段取りに時間がかかる前提でスケジュールを組んでおくと安全です。
工場や倉庫の側では、事務所とは事情が変わります。騒音のある環境では着信音が聞こえにくく、増設先が構内の離れた棟になることもある。電話機を置く位置ひとつで配線の距離が変わるため、現地を見ずに台数だけで見積もると、後から追加費用が出やすくなります。事前に設置場所を図面で押さえておくと、話が早く進みます。
どこまで自社で確認し、どこから外部に頼むか
自社でできることは、思っているより多くあります。主装置の型番と設置年の確認、電話機の台数と設置場所の一覧化、現在の回線契約の内容、保守契約の有無と範囲、この先の増員・移転の予定。ここまでは社内の情報だけで整理できます。
一方、外部に任せるべき領域は明確です。回線工事や構内配線の敷設、主装置の設置と設定、既存設備との接続の可否判断。電気通信設備の工事には有資格者による施工が求められる範囲があり、自己判断での作業は避けてください。判断に迷う部分は、現地を見てもらうのが結局は早いです。
依頼するときは、「見積もりをください」より「今の構成でこの先何年使えるか見てほしい」と伝えるほうが有効です。前者は機器の値段が並ぶだけですが、後者は判断材料が返ってきます。この違いは大きい。
こういうビジネスフォンは今すぐ確認すべき
- 主装置の型番や設置年が社内の誰にも分からない。導入担当者がすでに退職しており、書類も残っていない状態
- メーカーの保守受付がすでに終了している、または保守契約が「部品がある場合のみ対応」という条件になっている
- 内線を一台増やしたいのに増設できず、既存の電話機を複数人で共用してやり過ごしている
- 特定の電話機だけ調子が悪い、保留が切れる、といった症状を現場が回避しながら使っている
- 一年以内に移転、拠点の追加、まとまった増員のいずれかが決まっている
- 回線をひかり電話などに切り替えたが、主装置は当時のまま変換装置を挟んで運用している
一つでも当てはまるなら、入れ替えを即決する必要はありませんが、現状の確認だけは先に済ませておくべきです。確認には費用がかかりません。かかるのは、何も分からないまま故障した日の時間と損失のほうです。
よくある質問
Q1. ビジネスフォンの寿命はどのくらいですか。
一般に、主装置は導入から十年前後で更新を検討する会社が多い印象です。ただし寿命は使用環境や機種で幅があり、年数だけでは決まりません。年数よりも、メーカー保守と部品供給が続いているかどうかを基準にしてください。
Q2. 壊れていないのに替える必要が本当にありますか。
必要かどうかは保守状況で決まります。保守が終わった機器は、軽微な不具合でも修理できず、全台入れ替えになる可能性があります。逆に保守が十分残っていて増設の予定もないなら、急いで替える理由はありません。
Q3. 電話が止まると、どのくらい業務に影響しますか。
業種によりますが、代表電話で受注や問い合わせを受けている会社では影響が大きくなります。復旧までの間、携帯電話への転送などで代替する方法はあるものの、代表番号にかけてきた相手にはつながらない状態になります。事前に代替手段を決めておくだけでも被害は変わります。
Q4. 一部の電話機だけ交換することはできますか。
同一機種で互換性のある電話機が入手できれば可能です。ただし販売終了から時間が経った機種は、電話機単体でも入手が難しくなります。中古品で対応する方法もありますが、その場合は保証の扱いを事前に確認してください。
Q5. クラウド型に替えれば主装置は不要になりますか。
方式によっては主装置を置かない構成も可能です。ただしインターネット回線やLAN環境の品質に通話品質が左右されるため、社内のネットワーク状況の確認が前提になります。拠点数や利用形態によって向き不向きが分かれるので、現状の使い方と合わせて比較してください。
Q6. 入れ替えにはどのくらいの期間がかかりますか。
規模によりますが、機器の手配と工事日程の調整で、少なくとも数週間は見ておくのが現実的です。ビルの共用部で工事が必要な場合や、作業時間に制限がある場合はさらに延びます。故障してから動くと、この期間がそのまま業務への影響になります。
Q7. 電話番号は入れ替えても変わりませんか。
同じ場所で同じ回線を使い続ける場合、番号はそのまま引き継げるのが一般的です。ただし移転を伴う場合や、回線の種別を変更する場合は条件が変わります。番号の継続可否は事前に通信事業者へ確認しておくと安心です。
まとめ
ビジネスフォンの入れ替えは、故障という結果を待って判断するものではありません。保守が終わる時期から逆算し、余裕のあるうちに動く。これが唯一の安全な進め方です。
まず確認すべきは、主装置の型番と設置年、メーカー保守の状況、内線数の余裕、そしてこの先三年の会社の予定。この四つが揃えば、今年動くのか、三年後でいいのかは自然に決まります。
正直なところ、この確認作業は一日で終わる程度の手間です。それでも先送りされ続けるのは、緊急ではないからにすぎません。緊急になったときには、選択肢はほとんど残っていない。それが電話設備の厄介なところです。
電話が止まった日、社内で最初に困るのはどの業務でしょうか。そして今、あなたの会社の主装置の型番を、すぐに答えられる人はいますか。まずはその一点を調べるところから始めてみませんか。
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