
「家庭用ルーター1台」を卒業するために|要件整理から構成図・配線・運用まで
【この記事のポイント】
- PC30台以下の小規模オフィス向けに、「回線・ルーター・スイッチ・Wi-Fi・配線」の基本構成と、スター型ネットワークでの組み方がイメージできる
- よくある失敗(家庭用ルーター1台でスタート、ハブを“数珠つなぎ”、ゲストと社内を未分離)と、それを避けるための要件整理〜構成図の作り方が分かる
- 実体験と現場の声から、「とりあえず配線したネットワーク」と「最初に設計してから組んだネットワーク」の日常の違いが、感情レベルで想像できる
今日のおさらい:要点3つ
- 一言で言うと、小規模オフィスのネットワークは「回線1本+ルーター1台+スイッチ1〜2台+業務用Wi-Fi」をスター型でシンプルに組むのが基本です
- 最も重要なのは、「①席数と端末数」「②有線/無線の優先度」「③ゲストの有無」「④今後3年の拡張予定」を最初に整理し、それに合わせてポート数・AP数・配線ルートを決めることです
- 失敗しないためには、「今何台つながっているか」と「どこが詰まりやすいか」を見える化し、家庭用機器の“応急処置ネットワーク”から、図面と台帳のある“育てやすいネットワーク”へ、早めに切り替えておく必要があります
この記事の結論
一言で言うと「小規模オフィスは、“必要最低限の機器でスター型に整理する+将来の席数増加を2〜3割見込んでポートと配線を余らせておく”構成が最適」です。
最も重要なのは、「①要件整理(人数・端末・用途)」「②構成設計(回線・ルーター・スイッチ・Wi-Fi・配線)」「③セキュリティとゲスト分離」「④運用ルールと台帳」の4ステップを、開業や移転のタイミングで一度しっかり踏むことです。
失敗しないためには、“その場にあるハブをつないでおく”のではなく、NTTやCiscoなどが示す小規模オフィス構成例を参考にしながら、「どこからどこまでを自社でやり、どこから先を構築業者やマネージドサービスに任せるか」を、早い段階で決めておく必要があります。
小規模オフィスのネットワーク構成、基本パターンはこれ
基本構成の“型”を知る(1拠点・1フロアの場合)
TDCソフトの解説では、従業員数名〜数十名の小規模オフィス向け構成例として、次のような“型”が示されています。
- インターネット回線:1回線
- ルーター:1台
- スイッチ:1〜2台(8〜24ポート)
- デバイス:10〜30台(PC・プリンタ・IP電話など)
NTTPCやNTT東日本のコラムも、小規模〜中小企業向けには、
- スター型(全端末を1台のルーター/スイッチに集約)
- 必要に応じてツリー型(コアスイッチ+フロアごとのスイッチ)
を基本として紹介しています。
ネットイノベーションの小規模オフィス向けガイドでも、
- 現地調査と要件整理
- ネットワーク設計(IP・VLAN・機器・配線)
- 機器調達と配線
- 設定と動作確認
という5ステップが提示され、「ケーブルはCat6以上」「予備ケーブルを数本追加する」など、実務的なポイントが挙げられています。
正直なところ、この“型”をひとつ押さえておくだけで、余分な機器に惑わされずに済みます。
【実体験1】“余り物のハブ”で組んだネットワークの末路
以前、数十名規模のオフィス移転を手伝ったときのことです。 移転前のネットワークは、
- 回線:1本
- ルーター:1台
- ハブ:なぜか5台(メーカーも世代もバラバラ)
という構成でした。
配線を辿ってみると、
- ルーターの下にハブA
- そこからハブB、Cへ数珠つなぎ
- さらにハブDが天井裏でひっそりと働いている
という“ハブマトリョーシカ状態”。
障害が起きるたびに、誰かが天井板を外してケーブルを探し、溜息をつきながら
「正直なところ、誰がいつこうしたのか、もう誰も覚えてないんですよね。」
とつぶやいていました。
移転を機に、
回線→ルーター→スイッチ1台→各席のスター配線
に整理したところ、「どこで何がつながっているか、紙1枚で説明できるネットワーク」に変わりました。
有線と無線の役割分担を決める
PowerSupportやCiscoの小規模オフィス向けガイドでは、
- 有線LAN:安定性・速度重視、固定席のPCやサーバ、プリンタに向く
- Wi-Fi:柔軟性・利便性重視、ノートPCやスマホ、会議室用に向く
とし、「可能なら各席に有線を敷きつつ、Wi-Fiも併用する構成」を推奨しています。
Zennの構築例では、
- 各席に有線
- Wi-Fi APは天井付近に設置
- VLANでゲストと社員を分離
- ISPは2アカウント(社員用の固定IP+ゲスト用)
という“ちょっと本格的な”小規模オフィス構成が紹介され、「Wi-Fi APだけはケチらずに買う」と書かれています。
実は、「全部Wi-Fiでいいや」と始めたオフィスほど、あとで「やっぱり一部は有線が欲しい」と言い出します。最初から役割分担を決めておいた方が、配線も投資もムダが出にくいです。
小規模オフィス構築のステップとチェックポイント
ステップ① 要件整理(人数・端末・用途・拠点)
doracoonやNTTPCは、社内ネットワーク構築の最初のステップとして、「自社のネットワーク環境と求めることの整理」を挙げています。
確認すべき主な項目:
人数と端末数
- 社員数、PC・スマホ・タブレット、プリンタ・IP電話・IoT機器など。
利用用途
- メール・Web閲覧だけなのか、Web会議・クラウド業務・ファイルサーバ利用があるのか。
フロアと拠点
- 1フロアだけか、複数フロア・支店があるか。
将来の拡張
- 3年以内の増員や拠点追加の予定。
NTT東日本は、ネットワーク構築のポイントとして「接続端末台数や拠点数の把握」「先を見据えたネットワーク構成」を強調しています。
よくあるのが、“今の台数だけ見て機器を選んでしまい、1年後にポートが足りなくなる”パターンです。
【現場の声】「実は、席数より“今後3年で何人増えるか”を先に聞きます」
SIerや構築業者のコラムでは、担当者の本音として
「正直なところ、今の席数だけで設計すると、2年後にまた配線工事になります。」
という声がよく出てきます。
小規模店舗・事務所のガイドでも、
- ステップ1:要件整理(必要な機器・回線・予算・目的)
- ステップ2:機器選定(ルーター・スイッチ・AP)
- ステップ3:配線
という流れの中で、「席数+α数ポート」の余裕を持たせることが推奨されています。
ケースによりますが、“3年で2〜3割増える”くらいのイメージを前提にポート数と配線を決めておくと、あとで「全部やり直し」になりにくいです。
ステップ② 設計(構成図・配線・IP・セキュリティ)
NTTコミュニケーションズの完全ガイドやネットイノベーションの解説では、設計フェーズで以下を決めるとしています。
物理構成(トポロジー)
- スター型・ツリー型、フロアごとのスイッチ配置。
IPアドレス設計
- サブネット、DHCPの範囲、サーバ・プリンタの固定IP。
VLAN設計
- 業務用とゲスト用の分離。
機器選定
- ルーター、スイッチ(PoEの有無)、Wi-Fi APの台数と機種。
配線ルート
- ケーブルの通し方(二重床・天井裏)、Cat6以上の採用。
PowerSupportやNTTコム チェオも、「ネットワーク構成図」と「機器管理台帳」の重要性を挙げ、構築後の運用・変更作業の手間を減らすために、最初の段階で図面と台帳を作成することを推奨しています。
正直なところ、「構成図は頭の中にあります」は、障害が起きた瞬間に一番困るパターンです。紙1枚でも図を残しておくと、未来の自分が本当に楽になります。
小規模オフィスならではの“よくある失敗”と対策
失敗① 家庭用ルーター+安価ハブで延命し続ける
ITS COMやAxoneのコラムでは、小規模オフィスのWi-Fi・LAN構築でよくある失敗として、
- 家庭用ルーター1台でスタート
- 席が増えるたびに、安価なハブを追加
- 結果、どこがボトルネックか分からない
というパターンが紹介されています。
対策としては、
- 業務用ルーターに切り替える(同時接続数・セキュリティ機能が強い)
- ハブの“数珠つなぎ”をやめ、スイッチ1〜2台に集約する
- ゲスト用と社内用をSSID・VLANで分ける
といった“整理と再設計”が推奨されています。
実は、「その場しのぎのハブ追加」は一番簡単ですが、最終的には一番高くつきます。
【実体験2】「席が増えるたびにハブを足していたら、誰も全体像を説明できなくなった」
別の現場では、開業当初に
- 家庭用ルーター1台
- 5ポートの安価ハブ
という構成からスタートしました。
そこから数年かけて人が増えるたびに、
- 10ポートハブを追加
- 既存ハブにつなぐ形でまたハブを追加
を繰り返した結果、最終的にハブが7台、ケーブルが天井裏と床下で絡まり合うネットワークができあがっていました。
障害対応のたびに、情シス担当が脚立を担いで天井板を外し、汗を拭きながら
「正直なところ、自分でもこの配線を全部説明できる自信はないです。」
とつぶやいたのを覚えています。
移転を機に、
- 業務用ルーター+24ポートスイッチ×1台
- Wi-Fi APを天井に2台設置
- 配線はCat6でスター型に整理
という構成に変えたところ、障害対応の時間が体感で半分以下になり、日常の“なんとなく遅い”もほぼ消えました。
失敗② セキュリティとゲスト分離を後回しにする
NTT東日本や各社は、小規模オフィスでも
- ゲスト用と社内用のネットワーク分離
- ファイアウォール・UTMによる一元管理
- ウイルス対策やPC暗号化
などのセキュリティ対策を、構築時にセットで考えるべきとしています。
NTTコム チェオの解説でも、
- ネットワーク設定
- LANケーブル配置・ハブ設置
- 無線LAN設定
- VPN・ファイアウォール・ウイルス対策
まで含めた“トータル構築”に触れ、「後から追加するより、最初から全体像を描いておいた方が効率的」と説明しています。
よくあるのが、「社員用SSIDをそのまま来客に教える」「ルーターの管理パスワードが初期のまま」という状態です。
よくある質問
Q1:小規模オフィスなら、家庭用ルーターでも大丈夫ですか?
A1:台数や用途によりますが、PC10台以上やクラウド利用が多い環境では、同時接続数やセキュリティ機能の面から業務用ルーターを推奨する解説が多いです。長期的には業務用に切り替えた方が安定します。
Q2:スイッチ(ハブ)は何ポートあれば良いですか?
A2:TDCの例では、10〜30台程度で8〜24ポートのスイッチ1〜2台が目安とされています。席数+プリンタ・IP電話+予備2〜3ポートを見込んだポート数を選ぶと良いです。
Q3:有線とWi-Fi、どちらを優先すべきですか?
A3:NTTやCiscoのガイドでは、固定席のPCやプリンタは有線、ノートPCやスマホ・会議室はWi-Fi、という役割分担が推奨されています。安定性を重視するなら、まず有線をベースに考えるのがおすすめです。
Q4:構成図まで作る必要がありますか?
A4:NTTコムやネットイノベーションは、構成図と機器台帳の作成を強く推奨しています。障害時やレイアウト変更時の手戻りを減らし、外部業者への説明もスムーズになります。
Q5:ゲスト用Wi-Fiはどう分ければ良いですか?
A5:SSIDを分け、可能ならVLANや専用ルーターで社内ネットワークと分離します。ITSCOMや各社は、小規模でもゲストネットワークの分離を強く推奨しています。
Q6:構築を全部自社でやるのは難しいですか?
A6:doracoonやNTTのコラムは、「PC30台以下であれば自社で構築可能だが、配線やセキュリティまで含めると専門業者に一部を任せた方が結果的に安く済むケースも多い」としています。
Q7:予算感はどれくらいを見ておけば良いですか?
A7:Axoneの小規模オフィス向け記事では、席数とレイアウトにより大きく変わるものの、「家庭用から業務用Wi-Fi+有線LANに切り替える工事」の目安が紹介されています。数十万円規模からスタートする例が一般的です。
まとめ
小規模オフィスのネットワークは、「インターネット回線1本+業務用ルーター1台+スイッチ1〜2台+用途に応じたWi-Fi AP」をスター型でシンプルに組み、席数・端末・用途・拠点・将来の増員を踏まえてポートと配線に2〜3割の余裕を持たせておく構成が、コストと安定性のバランスに優れています。
NTTや各社のガイドが示すように、要件整理→設計→機器選定→配線→設定と動作確認→運用・構成図と台帳作成、というステップを踏み、家庭用ルーターや“数珠つなぎハブ”に頼らず、ゲスト分離やセキュリティも含めた“育てやすいネットワーク”にしておくことで、将来の拡張や障害対応の負荷を大きく減らせます。
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