
「まだ動くから」を卒業するために|5年スパンで計画するロールリング更新の進め方
【この記事のポイント】
- ネットワーク機器(ルーター/スイッチ/Wi-Fi)の「耐用年数」と、「まだ動いているけれど、そろそろ替えるべきサイン」が分かる
- Ciscoなど大手ベンダーの製品ライフサイクル(EoL/EoS)と、自社の更改タイミングをどう合わせると“いきなりサポート切れ”を防げるかがイメージできる
- 実体験と現場の声から、「壊れてから慌てて替えるネットワーク」と「5年スパンで計画的に入れ替えるネットワーク」の日常とリスクの差が、感情レベルで想像できる
今日のおさらい:要点3つ
- 一言で言うと、「ネットワーク更改の基本ライン」は“法人向け機器なら5〜7年/Wi-Fiルーターなら4〜5年”をひとつの目安に、サポート終了日と業務要件の変化を重ねて判断すること
- 最も重要なのは、「①寿命・故障サイン」「②サポートとセキュリティ更新」「③業務上の性能不足(端末や利用数の増加・クラウド化)」という3つの視点で更改の必要性を評価すること
- 失敗しないためには、「全部一斉に入れ替える」か「壊れた順にバラバラに替える」かの両極端ではなく、“5年の中でコア機器→アクセス機器→Wi-Fi”のように優先度をつけたロールリング更新を計画することが大切
この記事の結論
一言で言うと「ネットワークは、“5〜7年”と“サポート終了日”と“体感の不満”が重なり始めたタイミングで、更新を本気で検討すべき」です。
最も重要なのは、「①機器の経過年数と劣化サイン」「②ベンダーのEoL/EoS・LDoS情報」「③端末増加やクラウド利用拡大による性能不足」を見ながら、“まだ動くから”ではなく“止まったときの損失”で更新タイミングを決めること。
失敗しないためには、「10年選手を抱えたまま全更改を先送りする」のではなく、5年計画でコア機器→拠点→Wi-Fiの順に少しずつ更改しつつ、NTTやCiscoなど大手のライフサイクル情報を年に1度チェックする運用を“当たり前”にしておく必要があります。
ネットワーク更改を考えるべき3つのサイン
サイン① 経過年数と「寿命サイン」が揃っている
ICT.jpのスタッフブログは、ネットワーク機器の耐用年数を次のように整理しています。
耐用年数(目安)
- ルーター:10年
- スイッチ:10年
- Wi-Fiアクセスポイント:10年
一方で、「耐久年数(実際に安定稼働する期間)」は法人向けでも5〜7年と言われると説明し、「耐用年数はあくまで会計上の目安であり、実運用上の寿命はそれより短いケースが多い」としています。
NTT東日本は、「ルーター本体の寿命は4〜5年が目安」としたうえで、
- インターネットが頻繁に途切れる
- ルーターが高温になっている
- 通信速度が明らかに遅い
といった症状がある場合、「寿命の可能性が高い」と指摘しています。
ITS COMやELECOMも、無線LANルーターについて
- 使用開始から4〜5年で性能低下が見られる
- 通信規格の進化とセキュリティの陳腐化も買い替え要因
とし、「正常動作していても“4〜5年+最新規格とのギャップ”が見えたら買い替えを検討」とまとめています。
正直なところ、“壊れてないからいいか”と10年使うのは、車検を二度三度すっ飛ばして乗り続けるようなものです。
【実体験1】10年選手のルーターが“ある朝ふっと”沈黙した日
以前、小規模オフィスで「気づけば10年近く使っているルーター」を見たことがあります。
- 毎日24時間稼働。
- ファーム更新は数年前で止まったまま。
- 設定を触れる人もすでに社内にいない。
それでも何年も動き続けていたので、誰も本気で「替えよう」とは言い出せませんでした。
ある月曜の朝、そのルーターは、静かに“沈黙”しました。
- ランプはついているのに、どの端子もリンクアップしない。
- 再起動しても状況は変わらない。
- 社員はスマホのテザリングでしのぐ。
その日の午前中、社内の空気は妙に静かで、あちこちから小さな溜息だけが聞こえました。
そのとき、“あのルーターはいつかこうなると分かっていたのに、何もしてこなかった”という気持ちが、じわっと押し寄せました。
「故障交換」ではなく「寿命交換」を前提にすることが、精神的にも業務的にもどれだけ大事かを痛感した出来事でした。
サイン② サポート終了(EoL/EoS・LDoS)が近づいている
Ciscoなど大手ベンダーは、製品のライフサイクルを明確に定義しています。
CurvatureやCiscoの資料によると、代表的なマイルストーンは次の通りです。
- EoL(End of Life):製品のライフサイクル終了を公式にアナウンス
- EoS(End of Sale):販売終了日
- EoNSA / EoSCR:新規サービス契約添付終了・サービス契約更新終了
- LDoS(Last Date of Support):サポート最終日
このLDoSを過ぎると
- ソフトウェアアップデートやセキュリティパッチが提供されない
- ハード故障時の正規ルートでの保守が受けられない
といった状態になります。
Curvatureは、「ネットワーク機器の交換時期を判断する際、耐用年数だけでなく、EoL/EoS・EOSLを一緒に見て、サポートが受けられないリスクを許容できるかどうかで判断すべき」と解説しています。
実は、“まだ動くけどサポートが切れた機器”をネットワークの中枢に置き続けること自体が、大きなリスクです。
サイン③ 業務要件に対して性能が追いつかなくなっている
ELECOMやBUFFALOのコラムは、「ルーターが正常動作していても、最新端末の性能を活かせないなら買い替え時」として、次のようなケースを挙げています。
- 新しいPCやスマホはWi-Fi 6/6E/7対応なのに、ルーターはWi-Fi 4/5のまま
- 接続端末が増え、一人あたりの帯域が不足して速度が出ない
- クラウドサービスやリモート会議が増え、従来のスループットでは足りなくなっている
NTT東日本や事例記事でも、「不安定なWi-Fiが業務の足かせになっていた企業が、通信環境と情報機器を見直すことで、業務効率が大きく変わった」ケースが紹介されています。
正直なところ、“ネットワークを替えたら業務が速くなる”というより、“業務の変化にネットワークが置いていかれている”ことが多いです。
ネットワーク更改の判断基準と優先順位
判断基準① 「寿命・故障リスク」視点で見る
更改を検討する目安として、次の3点をチェックします。
経過年数
- ルーター/スイッチ/AP:5〜7年で要注意、10年近くは要計画。
- Wi-Fiルーター:4〜5年で買い替え検討。
故障サイン
- 接続が途切れやすい、再起動すると直るが頻度が増えている。
- 異常な発熱、ファンの異音。
メーカー保証
- 保証期間から何年も過ぎている。
よくあるのが、「再起動で直るうちは大丈夫」と考えてしまうパターンです。 再起動頻度が月1→週1→毎日と増えてきたら、それは“寿命サイン”と見てよいです。
【実体験2】“再起動で乗り切る文化”が限界を迎えた瞬間
あるオフィスでは、
- ルーターが固まる → 「再起動お願いします」
- スイッチが怪しい → 「電源抜き差ししてみましょう」
が半ば文化になっていました。 最初は月に1回程度だった“儀式”が、半年後には週に数回ペースに。
ある日、リモート商談の真っ最中にネットワークが落ち、
- 先方の画面が固まる。
- 社内のチャットも沈黙。
- 誰かが静かに立ち上がってサーバ室へ走る。
商談後、上司がぽつりと
「正直なところ、“再起動担当”という仕事は、そろそろ卒業したいな。」
とこぼしました。
そこからようやく、
- 5年以上経過した中枢機器のリストアップ
- 故障履歴の洗い出し
- 3年計画での段階的な更改
が始まりました。
再起動でしのげているうちは“楽な選択”に見えますが、その影で、毎回少しずつ信用と時間が削られていると、あの現場で強く感じました。
判断基準② 「サポート・セキュリティ」視点で見る
Ciscoのライフサイクル資料やCurvatureの解説では、「サポートが切れた機器をどこまで許容するか」が、更改判断の重要な軸だと強調されています。
- OSやファームウェアのアップデートが提供されない
- 新しい脆弱性に対するパッチが出ない
- ハード故障時の交換在庫やメーカー保守がない
NTT東日本も、「重要度や影響度の高いネットワーク工事・基幹システム更改に際し、品質管理とリスクマネジメントを強化するため、品質保証室を設置した」と発表しており、切り替え時のリスクと品質を厳しく見る姿勢を示しています。
「まだ動くから」にセキュリティとサポートを乗せて評価するのが、2020年代の更改判断の標準です。
判断基準③ 「業務・パフォーマンス」視点で見る
ELECOMやBUFFALOは、「Wi-Fiルーターが古いままだと、最新端末の性能を活かせない」とし、
- 端末がWi-Fi 6/6E/7対応なのに、ルーターが旧規格
- 接続台数が増えて、一人あたりの速度が低下
- 4K動画やビデオ会議など新しい用途に対応できていない
といった「業務と性能のギャップ」を買い替えタイミングとして挙げています。
また、NTT東日本の事例では、「不安定なWi-Fiが業務のボトルネックになっていた企業」が、Wi-Fi環境の整備と情報機器の入れ替えで業務効率を改善しています。
実は、「ネットワークを替えないことで失っている時間と機会」を見える化すると、更新コストより“損しているもの”の方が大きいケースも多いです。
ネットワーク更改の進め方と優先順位づけ
ステップ① 現状棚卸しと「優先度マップ」を作る
Curvatureは、「ネットワーク機器の交換時期を判断する前に、機器に関連するリスクと技術的要件を洗い出し、それが受け入れられない場合にのみアップグレードを検討すべき」としています。
具体的には、
- 機器一覧と設置場所(コア/ディストリ/アクセス/Wi-Fi)
- 導入年・サポート終了予定・故障履歴
- 接続先(基幹システム・インターネット・拠点間)
を棚卸しし、
- 止まると致命的 × 古い/サポート切れ → 最優先
- 止まると困る × 5年経過 → 二番手
- 止まっても一時しのぎができる × 新しめ → 後回し
といった「優先度マップ」を作るイメージです。
正直なところ、ここを飛ばして「なんとなく古そうなところから替える」と、結果的にお金も工数も余計にかかります。
ステップ② 5年スパンの“ロールリング更改”を組む
ICT.jpのブログも、「故障交換に頼るのではなく、耐久年数5〜7年を踏まえて計画的に入れ替える」ことを推奨しています。
現実的なパターンは例えば、
- 年1回:ネットワーク全体の棚卸しとライフサイクルチェック
- 1〜2年目:コア/ルーター/ファイアウォールを中心に更改
- 3〜4年目:ディストリ/アクセススイッチの更改
- 5年目:Wi-Fi APや周辺機器の更改
といった“回転計画”です。
Curvatureも、「サポート契約の更新期限(EoSCR)やLDoSを意識しつつ、どの機器をアップグレードし、どの機器はサードパーティ保守に任せるかを整理すべき」としています。
「全部まとめてリプレイス」は一見スッキリしますが、予算もリスクもピークになりやすい。5年で回す前提の分散リプレイスの方が、現場には優しい設計です。
【現場の声】「ケースによりますが、“コアだけ先に替える”のもアリ」
ネットワーク更改の現場では、
「正直なところ、全部を一気に替える余裕はないので、まずはコア機器だけでも新しい世代にしたい。」
という相談がよくあります。
Curvatureは、そんな企業に対して
- コアは最新機種+メーカー保守
- アクセス系は耐久年数を見ながらサードパーティ保守
- EoL済み機器は役割を限定し、徐々に入れ替え
といった“混在期間”の運用も選択肢だと示しています。
ケースによりますが、「全部一気に最新」より、「止めたくないところだけ真っ先に最新」にする方が、現場の体感とリスクのバランスは取りやすいです。
よくある質問
Q1:ネットワーク機器の寿命は何年くらいですか?
A1:法人向け機器の耐久年数は5〜7年程度とされます。ルーターやスイッチは10年の耐用年数が目安に使われることもありますが、実運用上は5〜7年で更改を検討する企業が多いです。
Q2:ルーターやWi-Fiルーターの買い替え目安は?
A2:NTT東日本はルーター寿命の目安を4〜5年とし、ITS COMやELECOMもWi-Fiルーターは4〜5年で性能低下や規格の陳腐化が目立つとしています。頻繁に切断や速度低下が起きるなら買い替え検討のタイミングです。
Q3:サポートが切れていても、壊れなければ使い続けて問題ありませんか?
A3:CiscoのEoL/EoSやLDoSを過ぎると、セキュリティアップデートや保守が受けられなくなります。リスクを理解した上で“非クリティカルな場所”に限定して使うならともかく、中枢機器としての継続利用は推奨されません。
Q4:全部一気に更改するべきですか?
A4:必ずしもそうではありません。Curvatureは、機器の重要度とリスクを評価し、コア機器から優先的に更新し、アクセス機器はサードパーティ保守などと組み合わせて段階的に入れ替えるアプローチを推奨しています。
Q5:更改のタイミングを逃さないために、普段から何をしておくべきですか?
A5:年1回の棚卸しで、導入年・サポート期限・故障履歴を整理し、ベンダーのEoL/EoS情報を確認しておくことです。NTTのように、基幹システム更改時に品質保証・リスク管理を強化する動きも参考になります。
Q6:Wi-Fi端末が増えたときは、更改のタイミングですか?
A6:BUFFALOは「Wi-Fiにつなぐ機器が増えたら買い替え時」と明言しています。端末数の増加と新規格への対応は、Wi-Fiルーター・AP更改の重要なサインです。
Q7:予算が限られている場合、どこから替えるべきですか?
A7:止まると業務が止まるコア機器とインターネット出口を優先し、次に拠点間接続や重要VLANを支えるスイッチ、その後にWi-Fiや周辺機器といった順でロールリング更新するのが現実的です。サポート終了日と故障履歴を組み合わせて優先度を決めましょう。
まとめ
ネットワーク更改のタイミングは、「経過年数(5〜7年)」「寿命サイン(切断・低速・発熱)」「ベンダーのEoL/EoS・LDoS」「業務上の性能不足(端末増加・クラウド化)」という4つの観点が重なり始めた時が“本格的に検討すべきポイント”です。
Ciscoのライフサイクル情報やNTTの品質保証の取り組みが示すように、「まだ動くから」ではなく、「サポートとセキュリティが切れた状態で置き続けて良いか」「止まったときの損失に耐えられるか」で判断し、5年スパンでコア→アクセス→Wi-Fiのロールリング更改を組むのが、リスクとコストのバランスが良い進め方です。
実務的には、年1回の棚卸しとライフサイクルチェックを習慣化し、「壊れたときに初めて存在を思い出す機器」をゼロにしていくことが、ネットワークを“静かに”安定させる一番の近道になります。
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