
「落ちてから走る」運用を卒業するために|死活・状態・トラフィック・遅延を押さえる進め方
【この記事のポイント】
- ネットワーク監視の「目的」「監視対象」「監視項目」が、死活・経路・状態・トラフィックという軸で整理できる
- OSS(Zabbix・Nagiosなど)から商用クラウド監視まで、ツールの選び方と“自社に合う規模感”がイメージできる
- 実体験と現場の声から、「監視なし運用の疲弊」と「24時間365日監視を入れた後の変化」が、感情レベルで想像できる
今日のおさらい:要点3つ
- 一言で言うと、ネットワーク監視は「ネットワーク機器と通信の“体温”を取り続け、異常の前兆でアラートを上げる仕組み」
- 最も重要なのは、「①何を(機器・アプリ・回線)」「②何を見て(死活・CPU・遅延・トラフィック)」「③誰がどう動くか(運用フロー)」をセットで決めること
- 失敗しないためには、「全部監視しよう」とせず、“止まると困るところから”始め、アラートのしきい値をチューニングしながら段階的に広げていくことが重要
この記事の結論
一言で言うと「ネットワーク監視は、“落ちたら調べる運用”から、“落ちる前に気づく運用”に変えるために必須の仕組み」。
最も重要なのは、「①死活・状態・トラフィック・遅延の4種類を押さえる」「②監視ツールと通知ルールを決める」「③アラートに対する対応手順を用意する」という3ステップを押さえること。
失敗しないためには、“ツール導入=ゴール”ではなく、「監視項目の優先順位づけ」「アラートのチューニング」「24時間365日を自社でやるか、アウトソースか」といった運用設計まで含めて考える必要がある。
ネットワーク監視とは何か?押さえるべき基本
ネットワーク監視の目的と「4つの行動」
ManageEngineやNTT東日本は、ネットワーク監視の目的を
- ネットワークが正常に稼働しているかを確認する
- 障害や性能低下を早期に検知する
- 原因特定を早くし、ダウンタイムを短縮する
ことだとしています。
NTT東日本は、監視の行動を次の4つに整理しています。
- 死活監視(Pingなどで機器が生きているかを見る)
- ハードウェア状態監視(CPU・メモリ・ディスク・温度など)
- トラフィック監視(帯域利用率・パケット量)
- サービス・プロトコルの遅延監視(HTTP・DNS・メールなどの応答速度)
ManageEngineも、
- 死活監視
- 経路監視(traceroute)
- SNMPでの状態監視
が基本だと説明しています。
正直なところ、「Pingが通るかだけ見ていれば安心」という時代は終わっています。 CPU100%張り付きや回線輻輳、特定サービスの遅延など、“落ちる前のサイン”を拾えるかどうかが、今の監視の肝です。
監視対象と監視項目の具体例
LANScopeやAlaxalaの解説を踏まえると、監視対象は主に次の3カテゴリです。
ネットワーク機器
- ルーター、L3/L2スイッチ、ファイアウォール、無線APなど
サーバー・サービス
- OS、ミドルウェア、アプリケーション(Web/メール/DB)
回線・トラフィック
- インターネット回線、拠点間回線、VLANごとのトラフィック
監視項目の例:
- 死活:Ping応答、SNMP応答の有無
- 状態:CPU使用率、メモリ使用率、ポートの状態、エラーパケット数
- トラフィック:インターフェース単位の帯域利用率、Top Talker(誰が帯域を食っているか)
- 遅延:HTTP/DNS/メールの応答時間、経路上のどこで遅延しているか
WhatsUp Goldの解説では、NMS(Network Monitoring System)の基本機能として
- 検出(何がどこにあるか)
- マッピング(トポロジの可視化)
- 監視
- 警告
- レポート
を挙げています。
実は、「何がどこにあるか分からないネットワーク」は、それだけで監視不能です。 監視の第一歩は「構成図と機器リスト」の整備だと、どのベンダーも口を揃えています。
【実体験1】“落ちてから走る”運用に疲れ果てた頃の話
以前、とある中規模オフィスでネットワーク運用を手伝っていたときのことです。 その頃の運用は、今思えば非常にシンプルでした。
- 社内から「ネットがつながらない」と連絡が来る
- ルーターのランプを見に行く
- Pingを打って反応があるか試す
障害が起きるたびに、みんなの視線がネットワーク担当に集まります。 夜中にサーバ室で冷たい床に座り込み、ルーターのランプを睨みながら、ため息だけが増えていく。
ある日、連続して2回大きな障害が起きた後、上司から
「正直なところ、“落ちてから走る”運用はそろそろ限界じゃない?」
と言われました。 その一言でようやく、「監視がないから忙しい」のではなく、「監視を入れない選択をし続けていたから忙しい」のだと腹の底から理解しました。
それから数か月かけて、
- 主要ルーター・スイッチ・サーバだけでも死活監視
- 回線帯域のグラフ化
- 当直用のアラートメール
を整備したところ、「障害の前兆」に気づける場面が徐々に増え、夜中に走る回数は目に見えて減りました。
ネットワーク監視の構成パターンと導入ステップ
ステップ① 何をどこまで監視するかを決める
NTT東日本は、「ネットワーク監視を行うための4つの行動」として、死活・状態・トラフィック・遅延を挙げ、そのうちどれを優先するかは業務内容によるとしています。
まずは、「止まると困るサービス」から逆算して監視対象を決める
- 例:基幹系、メール、VPN、クラウドサービスへの出口
次に、「何が原因で落ちやすいか」を現場感覚で洗い出す
- 回線?ルーター?スイッチ?特定サーバ?
IT-TRANDの導入例でも、「監視対象を絞らずに全部にアラートを設定すると、ノイズに埋もれて本当に見たいアラートを見落とす」と注意喚起しています。
よくあるのが、「とりあえず全部にしきい値を設定して、メールを飛ばす」パターンです。 結果、毎日大量のアラートメールが届き、誰も真剣に見なくなります。
ステップ② ツールを選ぶ(OSS/商用/アウトソース)
ネットワーク監視ツールの比較記事では、代表的な選択肢として次が挙げられています。
OSS系
- Zabbix:SNMP・エージェント・トラフィックなど幅広く監視可能、中〜大規模向き
- Nagios:プラグインが豊富、小〜中規模向き
商用オンプレ/SaaS
- PRTG、WhatsUp Goldなど:GUIとテンプレートが充実し、中規模企業にも導入しやすい
マネージドサービス
- NTT東日本やNTT西日本などの運用監視サービス:24時間365日の監視と一次対応を代行
NTT東日本の例では、
- 700ノード
- 24時間365日監視
- ノード監視・プロセス監視・リソース監視
といった大規模環境を、監視ソフト+技術者チームで運用しています。
正直なところ、自社1〜2名で“24時間365日×数百ノード”を回すのは現実的ではありません。 規模や重要度によって、「自社運用+一部アウトソース」のバランスを取る発想が必要です。
ステップ③ アラートのしきい値と運用フローを決める
ネットワーク監視の運用でよくある失敗が、「アラートが鳴りっぱなしで誰も動かない」状態です。
- CPU使用率:常時70〜80%が普通のサーバに、“80%でアラート”を設定してしまう
- トラフィック:バックアップ時間帯に帯域が90%超え、毎晩アラートでメールボックスが真っ赤
NTT東日本やIntellilinkの運用サービスは、「導入時のチューニング」を重視し、
- 正常通信の誤検知・誤遮断を減らす
- 実際の運用状況に合わせてしきい値を調整する
ステップを組み込んでいます。
現場の声:「実は、最初の1〜2か月は“アラートの調整期間”だと思ってもらった方がいいです。」
アラート=即障害ではなく、
- Warning(注意)
- Critical(重大)
の2段階をつくり、「どのレベルで誰が動くか」を運用フローとして決めることが大事です。
ネットワーク監視の有無で“現場の日常”はどう変わるか
【実体験2】監視なしから「グラフがある世界」に変わったとき
別の現場で、Zabbixを導入したときの話です。 それまで、ネットワークのトラブルといえば、
「なんか今日は遅い気がする」
「午後になると必ず重くなる」
といった“感覚ベース”の声しかなく、
- 具体的にどの時間帯に
- どの回線が
- どれくらい詰まっているのか
誰も説明できない状態でした。
ZabbixでトラフィックとCPUを可視化し始めた途端、
- 毎日14〜16時に、ある拠点の回線がほぼ100%張り付き
- 毎週月曜の朝だけ、ファイルサーバのCPUが90%超え
という“クセ”が一目で分かるようになりました。
そのグラフを見ながら会議したとき、上司が
「正直、今までは“気合いで何とかしろ”としか言えなかった。これなら、どこに投資すべきかが見える。」
と小さく笑っていました。
グラフがあるだけで、議論が「気合いと根性」から「数字と計画」に変わる。 ネットワーク監視は、そのスイッチをオンにしてくれる仕組みだと感じました。
【現場の声】「ケースによりますが、“全部自前”をやめた瞬間、楽になります」
NTT東日本は、自社でゼロトラストセキュリティの運用・監視を行う中で、
- デバイスごとの通信状態を詳細に把握するため、ZDX(Zscaler Digital Experience)を活用
- 詳細なデータ収集とアラートを、ツールとチームで分担
していると紹介しています。
また、NTTテクノクロスやIntellilinkの運用サービスでも、
- 24時間365日監視
- 故障受付・エスカレーション
- 定期レポートとチューニング
などを組み合わせ、社内リソースをコア業務に集中させる価値を強調しています。
「実は、全部自前でやろうとしていた頃の方が、監視ツールの面倒を見ている時間が長かったです。」
という運用担当者の声は、かなり本音に近いと感じます。
ケースによりますが、“監視の仕組みづくり”は自社で、“24時間の張り付き”は外部に任せる、という線引きが、現場と経営の両方にとってバランスの良い落とし所になりやすいです。
よくある質問
Q1:ネットワーク監視は本当に必要ですか?
A1:ネットワーク障害は業務停止に直結します。監視は「止まったら調べる」から「止まる前に気づく」へ運用を変え、ダウンタイムと調査コストを大幅に減らすために必要です。
Q2:まず何を監視すべきですか?
A2:NTT東日本は、死活・状態・トラフィック・遅延の4つを挙げています。最初は「止まると困るサービス」に関わるルーター・スイッチ・サーバの死活とトラフィックから始めるのがおすすめです。
Q3:小規模なネットワークでも監視ツールを入れる意味はありますか?
A3:はい。台数が少なくても、「原因が分からない遅さ」や「たまに起こる断続的な障害」を可視化できるメリットは大きいです。OSSやクラウド型の軽量ツールを使えば、コストも抑えられます。
Q4:どの監視ツールを選べばいいですか?
A4:ZabbixやNagiosなどのOSSは柔軟で拡張性が高く、商用ツールは導入と運用の手間が少ない傾向があります。監視対象の台数・社内のスキル・24時間運用の有無で選ぶのが現実的です。
Q5:監視するとアラートが鳴りっぱなしになりませんか?
A5:初期は起こりがちですが、正常値の把握としきい値のチューニングで改善できます。運用サービスでも「誤検知を減らすチューニングフェーズ」を重視しています。
Q6:セキュリティ監視とネットワーク監視は別ものですか?
A6:役割は異なりますが密接に関連します。NDRやUTM監視など、セキュリティ専用の監視も増えており、運用上は「性能・可用性」と「セキュリティ」の両方を統合して見る流れになっています。
Q7:24時間365日の監視体制は、自社だけで用意すべきですか?
A7:NTTグループの事例でも、監視ソフト+専門チームで700ノードを24時間監視しています。規模や重要度次第ですが、夜間や休日対応はアウトソースを組み合わせる企業が増えています。
まとめ
ネットワーク監視は、「ネットワーク機器と通信の健康状態を、死活・状態・トラフィック・遅延の4つの軸で常時チェックし、障害の前兆をつかむための仕組み」です。
導入の要は、「何を・何の指標で・誰がどう動くために監視するか」を明確にし、監視ツールとアラートしきい値、対応フローまでを含めて設計することです。OSS/商用/運用サービスをうまく組み合わせれば、中小規模から大規模まで無理なく始められます。
「全部を完璧に監視しよう」とするのではなく、“止まると困るところから”監視範囲を広げ、アラートのチューニングを重ねて自社の運用に馴染ませていくことが、現場の負荷を増やさずにネットワーク監視を根付かせる一番の近道です。
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